女子労働

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 日本の産業化過程の研究において、なぜ女子労働がトピックの一つとして選ばれたか不思議に思う人もいるかもしれない。しかし、明治中期より急速に発達した綿紡績業と製糸業が主に女子労働によって担われたことを知れば納得するだろう。この二つの産業が獲得した外貨は、近代工業の基礎を築くための重工業製品の輸入に不可欠のものであったのだ。

 本研究会は、明治期以降、各産業分野において、技術革新が女子労働にいかなる変容をもたらしたか、という斬新な視点を設定して分析を試みた。戦前においては、製糸労働、炭鉱女子労働、都市下層社会の女子労働の三つを選び、戦後については、農業と漁業に代表される家族自営業における婦人労働と高度成長期の女子雇用労働を重点的に取り上げている。

 製糸業と石炭業の例を見てみよう。製糸業では、綿紡績業と同じく、若年女子労働による生産が行われた。しかし、綿紡績業が当初より機械制大工業であったのに対し、製糸業では、いったん輸入した先進的技術を換骨奪胎し、労働集約的な生産を追求したところに特徴がある。

 一方、石炭業では、当初、手工業的な採炭法が用いられ、夫婦が共に坑内の採炭作業に従事したが、昭和初期に至り、採炭法の機械化が図られ、同時に女子の坑内労働禁止が法制化されたため、女子鉱夫は整理されていったのである。