総合商社

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 「日本の経験」プロジェクトで総合商社が研究課題として取り上げられたのは、第1に、総合商社が日本の近代化過程において技術輸入の重要な仲介者であったことによるし、第2に、総合商社という組織や役割自体を、一種のソフト・テクノロジーと見ることができるからである。

 総合商社という言葉自体は戦後のものであるが、その活動は明治初期から始まっており、1876年にはすでに三井物産が設立されている。総合商社の活動は、日本の輸出入のみならず、三国間取引、技術移転、資源開発、現地生産をも行い、取り扱う品目は多岐にわたった。

 戦前期に、総合商社はすでに巨大化していたが、これを可能にしたのは、所有と経営とが早くから分離しており積極的な会社運営が可能であったことと、経営と実務に当たったのが優秀な大学卒業者の集団であったことが指摘されている。さらに、政府の支援や、商社の属する財閥の金融面での支援も重要である。

 敗戦により、日本の商社の海外活動はすべて停止し、海外資産は失われた。また戦後の財閥解体により財閥系総合商社は一時停滞したが、日本の高度成長に伴い、旧財閥系総合商社も専門商社系の総合商社も著しい成長をみせた。その成長には総合商社が世界各地に展開した海外事業所網が重要な役割を果たしたとされる。