
Dには,「南方軍政」関係資料が収録されている(注7)。
「南方軍政」に関する第一次資料で,現在まとまった形で見ることのできるものには,早稲田大学社会科学研究所所蔵「The Nishijima Collection」(主としてインドネシア軍政関係),防衛庁防衛研修所戦史室所蔵「南方軍政(主として馬来)関係資料」,東京銀行(旧横浜正金銀行)所蔵の南方開発金庫関係資料,外務省所蔵の資料等があるが,本資料はこれらを補完する意義をもつものと考えられる。分類に関しては,D1,D2で軍政一般,経済に関するものを扱い,D3〜D8では各地域別に資料を収録。またD9には「セレベス新聞」を,D10には大蔵省管理局「日本人の海外活動に関する歴史的調査」の一部である南方篇,欧米篇を,各々収録した。以下では紙幅の関係もあるので,「南方軍政」研究において本資料のもっている意義について簡単にふれておきたい。(D4,D9,D10については資料目録の中で付した編者の注記を参照)
第一に言えることは,本資料が「南方」占領地の各方面軍,軍政部,軍政監部の出した布告,政令等の合本である,「治官報」第1号〜第7号(D3-828〜937,ジャワにおける治集団の布告他,原資料は早大社研所蔵)及び「富公報」第1号〜第21号(D6-1074〜1097,マラヤにおける富集団の政令他,原資料は防衛庁防衛研修所戦史室所蔵)を収録している点である。これに,アジア経済研究所図書資料部所蔵の比島軍政監部「軍政公報」第1号〜第13号,及びビルマ軍政のもっとも基本的な第一次資料である森第7900部隊「緬甸軍政史」(マイクロ・フィルムから焼きつけたもの)の二点を加えると,アジア経済研究所のみで,現在までに明らかになっている「南方」各占領地の布告,政令他の集大成の基本文書の大半を,閲覧することが可能となる。この点は,利用者からみれば,本資料(「南方軍政」関係)の最大の利点といっても過言ではない。
第二には,本資料が,日本軍が占領下の東南アジアでおこなった経済面に関する調査の報告書を相当数収録している点にある。昨今,「南方軍政」の研究は,日本をはじめ,アメリカ,オーストラリア,オランダ,東南アジア各国等できわめてさかんであるが,しかし経済的側面の検討は,研究書はもちろん研究論文のレベルでもほとんど皆無と言ってよい状況にある。その意味で本資料に収録されている(ジャワ)軍政監部交通部「軍政監会議資料調書」(D3-981), 同軍政監部産業部「軍政監会議資料調書」(D3-982 〜988),ジャワ軍政監部「軍政下ジャワ産業綜観」(D3-990),「スマトラ島北部四州経済調査報告書」(D6-1131),陸軍司政長官山越道三「軍政下ニ於ケル比島産業ノ推移」(D7-1134)等は,「南方軍政」の経済関係の研究に寄与するところ大であると考えられる。また,ジャワ軍政監部による一連の農村実態調査報告書(D4-996〜1000)は,単に「南方軍政」研究のみならず,1930年代〜40年代のインドネシアの土地制度史研究にとっても,この間の資料上の空白を埋める貴重な資料となっている。軍政関係については,この他にもいくつかの特徴をあげることができるが,以上の二点のみからも,「南方軍政」の研究にとって必見の資料であると言うことができよう。
(注7)本資料中「南方軍政」関係資料を活用したものとしては,例えば,インドネシアについては,早稲田大学大隈記念社会科学研究所編『インドネシアにおける日本軍政の研究』のほか,日本軍政下のインドネシア経済を扱ったJohn O. Sutter, "Indonesianisasi; politics in a changing economy, 1940-1955", Vol. I, Part 2. (New York, 1959) がある。また,マラヤの「徳川資料」については,Yoji Akashi, "Japanese military administration in Malaya: its formation and evolution in reference to Sultans, the Islamic Religion, and the Moslem Malays, 1941-1945", (Asian Studies, Vol. VII, No. 1, April 1969), "Japanese policy towards the Malayan Chinese 1941-1945", (Journal of South East Asian Studies, Vol. 1, No. 2, September 1970) をあげることができる。
