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わが国における会社法制の形成

Author: 小橋一郎
Series: 国連大学人間と社会の開発プログラム研究報告
Published Year: 1981年
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目次

はじめに・・・・・・・・・2
Ⅰ 会社法制形成過程の概観・・・・・・・・・・2
Ⅱ 国立銀行条例・・・・・・・・・・9
Ⅲ ロ氏草案・・・・・・・・・・22
Ⅳ 旧商法・・・・・・・・・・37
Ⅴ 現行商法へ・・・・・・・・・・50
むすび・・・・・・・・・・56


はじめに

 本稿は,わが国において明治初年から同20年代に至る会社法制の形成を,主として会社の内部組織に視点を置いて考察するものである。考察範囲を明治20年代までとしたのは,明治32年に現行商法典が施行されるまでを会社法制の形成期と考えてよいと思うからである。もっとも現行法制とのつながりや比較には,随時触れることにする。一方,わが国において明治以前にどのような共同企業形態や共同企業意識が存在し,それが明治以降にどのようにつながるかという問題もあるが,その点の研究は他日を期すほかない。
 明治期におけるわが国諸法制の形成は,経済体制の確立や産業の振興,不平等条約改正のための法制整備,自由思想の浸透などを動因とし,また西欧との関連なしには考えることができない。会社法制の形成についても事は同じである。しかしそれら諸動因またはその複合との関係や西欧の法制・思想との関連を細かく分析することは,筆者の能力の外にある。ここでは,規則・条例・草案・法律などの規定そのものを考察するにとどまる。
 わが国において会社に関する一般的法規をもったのは,旧商法が初めてであって,それまでは個々の会社や特定の業種とくに銀行に関する個別的法規が存したにすぎない。しかしこれらの個別的法規も,一般的法規の先駆としてなにがしかの意味を有すると考えられるので,それらにも言及することにする。以下,まず会社法制の形成過程を概観し,次いでとくに国立銀行条例,ロエスレル氏草案および旧商法をとりあげる。

Ⅰ 会社法制形成過程の概観

1 明治初年,公に認められた最初の会社組織は,通商会社と為替会社である。明治2年(1869)2月,政府に通商司が置かれたが,その権限は,明治2年6月24日太政官令達によれば,「物価平均流通ヲ計ルノ権・両換屋ヲ建ルノ権・金銀貨幣ノ流通ヲ計リ相場ヲ制スルノ権・開港地貿易輸出入ヲ計リ諸物品売買ヲ指揮スルノ権・廻漕ヲ司ルノ権・諸商職株ヲ進退改正スルノ権・諸商社ヲ建ルノ権・商税ヲ監督スルノ権・諸請負ノ法ヲ建ルノ権」であった。通商司が内外商業の振作を計るために設立させたのが,通商会社と為替会社である。通商会社は,内外商業を振作経営することを目的とし,為替会社は,その振作経営に要する資本を融通運転して通商会社に助力を与え,あわせて民間の融通を便利にするもので,明治2年5,6月以来,東京・横浜・新潟・西京・大阪・神戸・大津・敦賀の8ヵ所に設立された1)。通商会社・為替会社は,政府の熱心な干渉保護によって一時隆盛の観を呈したが,施設の方法宜しきをえず,明治4年7月通商司が廃止されるに及んで衰運に向かい,消滅するに至る2)。事は失敗に終ったが,「邦人ヲシテ漸ク連合結社ノ必要ヲ悟ラシメタルノ效ハ決シテ少カラサルヘシ3)」と評価されている。
 為替会社は,わが国の銀行の最初である。その資本は豪商から募り,政府からも資金を貸し付け,その規則は通商司が定め,官吏を派遣して業務を監視し,預り金・貸付金・為替などの業を営み,また融通の便のため準備金を置いて金券・銀券・銭券・洋銀券発行の特典を付与された4)。半官半民の会社である。明治2年7月に定められた東京為替会社規則5)は,26ヵ条である。そこでは,為替会社は「通商司為替会社」,「通商司為替換会社」とも表示され,用語が必ずしも統一されていない。通商会社は「商社」と呼ばれている。また,「通商司為替換会社,商社両組ノ儀ハ……」,「通商司為替会社組合ノ儀ハ……」というように,組・組合という表現もみられる。役職名としては,「総頭取」,「頭取」,「組合役」,「月番」がみえる。「貸付並為替元備金」は,官府からの下渡金と,「会社総頭取ヲ始社中一統分限ニ応シ差出」す「差加ヘ金」とから成る。「差加ヘ金」には月一歩の利息が付く。社外の者も「預ヶ金」ができる。為替会社と通商会社は助けあって事業をなすべく,「両会社ノ諸帳面ハ社中ノ者ハ勿論両会社総頭取始メ組々相互ニ随意ニ見改ルノ権」がある。会社へ加わりたいという申出があれば,社中一同評議の上,身元を取り調べて加入させる。会社の金利所得は,3分の1を「国力積立備金」に,3分の1を「会社諸雑用手代其外月給手当仕払」に充て,3分の1を「差加金致候者ヘ出金高ニ応シ割渡」す。その他業務に関する諸定めがあり,最後に「権威私情ヲ以依沽ノ取計一切致間敷」と戒めている。

2 「政府ハ為替会社ノ創立ニヨリテ立会結社ノ方法ヲ民間ニ普及セシムルト共ニ或ハ会社辨及立会略則ノ書ヲ刊行シテ6)之ヲ民間ニ配布シ以テ共同企業ノ智識ヲ一般人民ニ扶植7)」した。しかし一方,次のような明治4年4月4日太政官達が府藩県へ出されている。「近来各地方ニ於テ商法便利ノ為メ追々諸会社取設候趣然ル処結社ノ規則モ不相心得懸空ノ見込ヲ以取扱候ヨリ往々訴訟ノ端ヲ開キ或ハ融通ノ道ヲ誤リ準備ノ正金モ充実セス預リ切手又ハ金券様ノモノ発行シ終ニ破産ノ資ト相成候儀モ有之哉ニ相聞不都合ノ事ニ候追テ一定ノ商規モ可相立候ヘ共差向右等ノ所為無之様各管轄庁ニ於テ委詳取調官許無之金券並空名預リ切手等有之候ハハ速ニ廃止正金ニ為引換候様可致事」。

3 明治5年(1872)に国立銀行条例(明治5年11月15日太政官布告349号)が発せられる。国立銀行という名称は,アメリカのナショナル・バンクを訳したもので,純然たる民営の銀行である。国立銀行条例は,国立銀行の設立・運営に関する法規であって,会社組織の規定と銀行業務の規定とが混在しているが,会社組織としてみるときは株式会社であって,わが国最初の株式会社組織として興味がある。この点は,節を改めて述べることにする。
 国立銀行制度は,商業上の金融機関の整備の要望に応えようとしたものであることはいうまでもないが,同時に政府発行の不換紙幣の消却を目的とするものであった。すなわち銀行をして資本金の6割に相当する紙幣を上納させて金札引換公債証書に換え,さらにその証書を抵当として同額の銀行紙幣を発行させ,この紙幣は正貨兌換とすることによって,不換紙幣を消却し,あわせて一般の金融を疏通しようとした8)。しかし当初国立銀行を開業したのは僅か4行であった。しかも不換紙幣の下落により経営困難となり,また華士族家禄制が廃止されて金禄公債証書が発行されたため,これを銀行紙幣の抵当とする必要が生じ,明治9年(1876)国立銀行条例が改正され,国立銀行は資本金の10分の8に当る公債証書を抵当として政府に預け入れ,同額の銀行紙幣を発行することができ,引換準備は通貨で流通高の4分の1を備え置くこととなり,正貨兌換の制度が廃止された。西南戦争以降国立銀行の創立は急激に増加し,明治12年には153行となり,以後政府は創立を許可しなかった9)。一方,明治9年の条例改正により,普通の銀行類似会社も銀行と称しうることとなり,私立銀行が増加した。明治9年に創立された三井銀行は,最初の私立銀行である。

4 政府の招きにより明治6年(1873)来日したフランス人ボアソナードに,明治12年(1879)民法草案の起草が命ぜられ,同じく明治11年(1878)来日したドイツ人ロェスラーに,明治14年(1881)商法草案の起草が命ぜられた。わが国の2大私法典,民法典と商法典の編纂が始められたのである。これらの起草は,西欧の立法を参考にして進められたから,ここで当時のフランス,ドイツ,イギリスの法制の状態に簡単に触れておこう。なお,明治元年は1868年,旧民法・旧商法が公布された明治23年は1890年,現行民法典が公布された明治29年は1896年,現行商法典が公布された明治32年は1899年に当る。
 フランスでは,19世紀初めにいわゆる5大法典が成立しており,そのうち民法典は1804年に,商法典は1807年に制定された。商法典は,商一般・海商・破産・商事裁判権の4編に分れ,会社・商行為・手形に関する規定は第1編に含まれている。この法典は,今なおフランスの現行法であるが,多くの特別法によって変更・補充されている。会社法の分野では,1867年の会社法,1925年の有限会社法があり,1966年には新会社法が公布されている。
 ドイツでは,法は長く地方的分裂状態であった。19世紀半ばに至って商法統一事業が進められた。まず1848年手形条例草案が公布され,各州は,それぞれの立法権に基づいて,1848年から1862年の間にこれを採用し,法律として施行した。これが普通ドイツ手形条例である。次いで1861年商法草案が公布され,同年から65年の間に同じく各州によって採用,法律として施行された。これが,普通ドイツ商法すなわちドイツ旧商法である。ドイツ旧商法は,総則と5編すなわち第1編商人たる地位,第2編会社,第3編匿名組合および商事当座組合,第4編商行為,第5編海商から成り,最も優れた立法事業と称された。1870年,1884年に株式会社の部分が大きな改正を受けている。普通手形条例と旧商法は,1869年北ドイツ連邦の成立によって連邦法となり,さらに71年ドイツ帝国の成立によって帝国法となった。普通手形条例は,1908年手形条例となり,33年ジュネーブ統一条約に基づく手形法の制定まで存続するが,旧商法は,ドイツ民法典の制定とともに,現行商法典によってとって代られる。すなわちドイツ民法典が1896年に,ドイツ商法典が97年に成立し,いずれも1900年1月1日に施行された。この商法典は,第1編商人たる地位,第2編会社および匿名組合,第3編商行為,第4編海商より成る。1937年株式法が制定されて,株式会社および株式合資会社はこれによって規制されることになり,会社編のこの部分の規定は削除された。株式法は,1965年に大きな改正を受けている。なお,1892年の有限会社法がある。
 イギリスは判例法の国であって,民法典・商法典のような統一的法典はない。しかし多くの制定法が存在し,会社法の分野では,1862年の会社法が諸制定法を統合した最初のものであって,以後何度も改められて現在に及んでいる。また,合名会社に当るものについては,1890年のPartnership Act,合資会社に当るものについては,1907年のLimited Partnership Actがある。
5 ロェスラー起草の商法草案(以下,ロ氏草案という)は,明治17年(1884)に脱稿した10)。最初に「商法立案ノ主義及ヒ其区域ノ緒言」があり,泰西通商国に行われる商法を採用しようとするゆえんを説き,各国商法通覧表を掲げて,フランス商法(1808年[ママ]),スペイン商法(1830年),オランダ商法(1838年),ドイツ商法(1861年),イタリヤ商法(1865年),エジプト商法(1874年)の編別を対照している。本文は,「総則」と「第1編商ヒ一般ノ事」,「第2編海商」,「第3編倒産」,「第4編商事ニ係ル争論」から成る。第1編は,12巻に分れ,第1巻ないし第5巻は現行商法の総則に当り,「第6巻商社」は会社法であり,第7巻ないし第10巻は商行為法に当り,第11巻は保険法であり,第12巻は手形法・小切手法に当る。その編別は,ほぼフランス商法典によっているといえる。もっとも当時としては,各国商法ともそれが通例であったであろう。内容的には,各国商法の中から適切なものを取捨選択しようとした努力がうかがわれる。会社法の部分については,節を改めて述べる。

6 ロ氏草案は,数種の委員により審議されたが,明治20年10月21日に設けられた法律取調委員会の議決を経て,元老院の会議に付され,元老院では調査委員や審査委員を置き,数十回の会議を経て,明治22年6月7日元老院総会によって可決された11)。これが,明治23年(1890)3月27日商法(明治23年法律32号)として公布され,明治24年1月1日より施行すべきものとされた。いわゆる旧商法である。次いで商法施行条例(明治23年法律59号)が,明治23年8月7日に公布され,同じく明治24年1月1日施行と定められた。なお,民法は,明治23年4月21日および10月6日に公布され,明治26年1月1日より施行すべきものとされた。これが旧民法である。
 旧商法は,「総則」と「第1編商ノ通則」,「第2編海商」,「第3編破産」から成る。第1編は12章に分れ,その第1章ないし第5章は現行商法の総則に当り,「第6章商事会社及ヒ共算商業組合」はほぼ会社法に当り,第7章ないし第10章は商行為法に当り,第11章は保険法,第12章は手形法・小切手法である。
 旧民法に対しては,外国法の模倣であり旧慣にそわないなどの理由から実施延期論が主張され,断行論との間にいわゆる民法典論争がまき起こるのであるが,旧商法に対しても,外国法の模倣であること,民法との調和が十分でないこと,急速に実施すれば経済界の混乱を招くなどの理由から,実施延期論が起り,断行論との間で論戦がなされた。そして明治23年の第1回帝国議会において,商法および商法施行条例の施行は明治26年1月1日に延期された。さらに明治25年の第3回帝国議会において,民法,商法,商法施行条例の施行が明治29年12月31日まで延期された。しかし会社・手形・破産については急速な立法が必要とされたので,明治25年の第4回帝国議会の協賛を経て,明治26年(1893)3月4日「商法及商法施行条例中改正竝施行法律」(明治26年法律9号)が公布された。これにより,商法および商法施行条例に所要の改正を加えたうえ,第1編第6章(商事会社および共算商業組合),第12章(手形および小切手),第3編(破産)ならびに施行条例中関係条文が,明治26年7月1日より施行され,また,第1編第2章(商業登記簿)および第4章(商業帳簿)が,同日より商事会社についてのみ施行された。こうして旧商法は,部分的ながら施行されるに至ったのである。

7 政府は,明治26年(1893)法典調査会を設け,旧商法修正の名の下に新商法典の編纂に当らせたが,脱稿が遅れるので,明治29年の第10回帝国議会の議を経て旧商法の全面的施行をさらに明治31年6月末まで延期した。その間に新商法草案ができ,商法修正案として明治30年議会に提出されたが,衆議院に解散があり,翌年再び解散があったため,この法案が成立しないうちに旧商法施行延期期間が満了し,明治31年7月1日から旧商法が全面的に実施されることになってしまった。明治32年(1899)ようやく新商法の法案が議会を通過し,同年3月9日公布,施行法とともに同年6月16日から施行された。これが現在の商法(明治23年法律48号)である。なお新民法の編纂も同様にして行われ,民法の前3編(総則・物権・債権)は明治29年4月27日公布(明治29年法律89号),後2編(親族・相続)は明治31年6月21日公布(明治31年法律9号),いずれも明治31年7月16日から施行された。これが現行民法である。
 商法の施行と同時に,旧商法は,第3編破産を除き,全部廃止された。破産編は,現行破産法(大正11年公布,同12年1月1日施行)がこれに代るまで効力を有した。新しい商法は,当時,第1編総則,第2編会社,第3編商行為,第4編手形,第5編海商の5編から成っていた。ドイツ旧商法を主として参考にしている。その後,明治44年(1911)に大きな改正があった。またジュネーブ手形法統一条約・小切手法統一条約に基づき,昭和7年(1932)手形法が,昭和8年(1933)小切手法が制定・公布され,いずれも昭和9年(1934)1月1日から施行され,商法第4編手形は削除されて,第5編海商は第4編に繰り上がった。昭和13年(1938)商法の総則編・会社編に大きな改正があり,同時に成立した有限会社法とともに,昭和15年(1940)1月1日から施行された。昭和25年(1950)の大きな商法改正は,主とし
て株式会社に関しており,アメリカ法の制度の導入が顕著で,昭和26年(1951)7月1日から施行された。その後もしばしば改正が行われ,主なものは,昭和30年(1955),同37年(1962),同41年(1966),同49年(1974)の改正であるが,大部分は株式会社の部分に関する。昭和56年(1981)の改正も,主として株式会社に関するもので,昭和57年10月1日から施行される。

8 なお,「会社」という語の意味12)について,本稿に関係のある範囲で触れておく。明治2年の東京為替会社規則では,為替会社,通商会社を意味する商社,両会社という表現が用いられるが,時には組合という表現も併用されている。明治5年の国立銀行条例では,国立銀行を創立するにはその「組合」の人数は必ず5人以上(第1条第1節),「会社創立証書」(第1条第3節)という表現がみられるが,多くは用いられていない。ロ氏草案では,商社,会社が用いられるが,当座組合は民法の区域内に属する(67条解説)という表現もある。旧商法は,商事会社,会社を用いるが,共算商業組合の条項(265条以下)には,共分組合,匿名組合の語がある。旧民法は,現行民法の組合に当るものを会社と呼び(財産取得編6章),商事会社に特別な規則は商法で定めるとし(同116条),これに対立するものとして民事会社という表現を用いている(同118条)。現行法に至って,会社は商法上の制度,組合は民法上の制度と区別された。フランス,ドイツで会社についても組合についてもsociete,Gesellschaftの語が用いられるのと異なることになったわけである。


1)以上は,明治財政史編纂会編『明治財政史』12巻,328ページ,330ページ以下による。
2)前掲書333ページ。
3)前掲書334ページ。
4)前掲書323ページ。
5)前掲書335ページ以下に掲げられている。
6)「会社辨」,「立会略則」の発行は明治4年である。西原寛一『日本商法論』1巻,191ページ。
7)『明治財政史』12巻,491ページ。
8)『明治財政史』13巻,3ページ。
9)以上は,前掲書3ページ以下による。
10)本稿では「ロエスレル氏起稿商法草案(上・下巻)司法省」によっている。
11)長谷川喬『商法正義』第一巻緒言,4ページ以下。
12)これについては,野田良之「会社という言葉について」『鈴木竹雄先生古稀記念現代
商法学の課題』中,689ページ以下に詳しく述べられている。

Ⅱ 国立銀行条例
1 国立銀行条例と,その細目を定める国立銀行条例成規は,明治5年11月15日太政官布告349号により定められ,明治9年8月1日太政官布告106号をもって従来のものを廃止して新条例を定め,旧条例により創立した者も新条例に準拠して出願し免許を受けるべきものとされた。
 明治5年の条例は,「第1条 銀行創立ヲ願請スル手続ヲ明ニス」,「第2条 株金ノ募方及創立証書銀行定款ノ差出方ヲ明ニス」というように,計28条の項目があり,各条に1節ないし数節が含まれていて,計161節がある。成規は,「国立銀行創立ノ事」,「取締役ノ事」というように18項目に分れ,各項目に規定や文例が掲げられている。条例・成規とも,音読の難解な漢字には右側に,たとえば董轄(トウカツ)というようにフリガナを施し,意味の難解な漢字には左側に,その意味を片仮名で付している。とくに後者の例が多い。国立銀行(ネーショナルバンク),準備金(ヒキアテモトキン),募(アツメ)方,上任(ヤクマエ),社印(ナカマノイン),鎖店(ミセヲシメル),議案(ゾンジヨリカキ),簿冊(チョウメン),兌換(ヒキカヘ),公売(セリウリ),私売(アイタイウリ)等々である。
 明治9年の条例は,「第1章 銀行創立ノ方法。創立証書銀行定款ノ差出方及ヒ開業免状ノ下附並ニ諸役貝撰任方法等ノ事ヲ明カニス」,「第2章 銀行資本金ノ制限。公債証書銀行紙幣交収ノ割合並ニ其手続及ヒ引換準備金等ノ事ヲ明カニス」,「第3章 株式ノ分割。資本金入金ノ割合。株式没入。株主牒ノ記入。株式ノ売買及ヒ資本金増減ノ事ヲ明カニス」,というように計16章あり,第1章は第1条ないし第16条,第2章は第17条ないし第27条,第3章は第28条ないし第44条というように各章に1条ないし数条あり,計112条となっている。成規は,「銀行創立手続ノ事」,「株金募方ノ事」というように21項目に分れ,各項目に規定や文例がある。条例・成規とも,漢字にフリガナや意味を示す片仮名はもはや付せられていないが,条例の各条には見出しがあり,成規は各規定に条文番号があって第1条から第66条に及ぶ。
 いずれの条例・成規も,会社組織に関する規定と銀行業務に関する規定が混在しているが,会社組織の視点から,まず明治5年のものを,次いで明治9年のものを考察する。
2 明治5年の国立銀行条例・同成規を,ほぼ設立,株式,機関,計算,定款変更などにあてはめてみよう。
(1)国立銀行を創立するには,5人以上の発起人が,連名で願書を大蔵省の紙幣寮へ提出する(条例1条1節・2節,成規)。「国立銀行ヲ創立セントスルニハ其組合ノ人数ハ必5人以上タル可シ」(条例1条1節),「此5人ハ即発起人タルヘシ」(同2節),「国立銀行ヲ結ハント欲スル者ハ先ツ5人以上ニテ申合セ組合ヲ定メ連印ノ願書ヲ認メ……」(成規)とあるのは,いわゆる発起人組合のことであろう。紙幣頭は,その願書を検案し,相当と思量すれば,大蔵卿の許可を得て,発起人へ会社創立証書ならびに定款の差出方を命ずる(条例1条3節)。この場合,紙幣頭は発起人について十分調査すべきものとされている(同但書)。この命があると,発起人はただちに株金の募(アツメ)方に取り掛り,株主が定まって後一同の協議によって銀行創立証書,定款を認め,頭取・取締役を選任し,右の証書,定款を紙幣寮に差し出す(条例2条1節・2節)。もっとも,「株金ヲ募り初ルニハ」定款を3通認めて紙幣寮に差し出すべきことも定められているが(成規),定款には株主の連名印が要求されているので,少なくとも正式の定款作成は,株主募集の後であろう。
 株金募方の手続の大要は,成規に示されているが,「社ヲ結フ人々ノ便宜ニ任ス」べく,別に規則を設けないとされている。成規によれば,新聞紙・張紙などで「-州-郡-地ニ於テ何々ノ方法ヲ以テ国立銀行ヲ創立スルニ付其組合ニ加入セント欲スル人々ハ-月-日ニ-街-屋ニ来ルヘシ発起人何ノ誰々等」と記載して世人に通知し,当日右の-街-屋において,発起人が帳面を開き,申込人の姓名ならびに入金すべき金高をこの帳面に書き込み,-月-日までに入金すべしと取り定める。銀行に加入する入金の高は,「百円ヲ以テ一株ト唱へ」「何ノ誰ハ幾株ト唱フヘシ」「尤株数ノ多少ハ入金人ノ望ニ任スヘシ」。入金の当日に至って,入金人はおのおの書き込んだ金高を発起人方に持参し(全高を入金するか半高を入金するかは,前からの約束による),「発起人ハ此入金人ニ金子引替ニテ銀行ノ株手形ヲ渡スヘシ(100円1株ニ付手形1枚ト定ム故ニ1000円ヲ入金シタル人ニハ株手形10枚ヲ渡ス)」。ここにおいてこの入金人を某国立銀行の株主と唱える。この書込で集金の高が発起人の見込高より多いときは,発起人の任意で,入金人の申出の高を減少してもよく,銀行の元金高を最初の見込よりも増加してもよい。以上,まったくの公募を予定した定めである。株手形は,株券に当る。
 創立証書に記載すべき要件は,「銀行ノ名号,但此社号ハ紙幣頭ノ承認ヲ得テ公然ト唱ルヲ得ヘシ」,「銀行ノ業ヲ営ムヘキ地名」,「元金ノ高並其株ノ内訳株主ノ姓名居所」,その他の取極めである(条例2条3節)。別に文例があり(成規),「第1条 此銀行ノ名号ハ―国立銀行ト称スヘシ」,「第2条 貸付金預リ金其他ノ業ヲ経営スヘキ此銀行ノ公店ハ-州-郡-街―ニ於テ取建ヘシ」,「第3条 此銀行ノ元金ハ-万-千円ニテ100円ヲ以テ1株ト定メ-株ニ分割スヘシ」,「第4条 此銀行ノ株主等ノ姓名宿所並ニ所持ノ株数ハ左ノ表ノ如シ……」というようになっている。定款については,成規に文例が掲げられている。その内容は,名号,元金高および1株の金額,取締役の選挙方法,頭取などの選任方法,鎖店,改正などに関する。創立証書も定款も,株主の協議によって定められ,株主の連名印を要する。しかし両者の性質は異なるのであって,成規によれば,「創立証書ハ国立銀行ヲ結フニ付政府ト其銀行トノ約定書ニ比シキ大切ノ書面ナリ又銀行定款ハ全ク銀行組合ノ取極ナレハ政府ニ関係アルニ非ス株主等ハヨク此別ヲ心得ヘシ」。
 紙幣頭は,創立証書と定款につき大蔵卿の承認を得て後,銀行に開業免状を与える(条例3条1節)。紙幣頭は,株主の入金,元金集合の都合,株主の正不正などを調査し,不都合のないことが判然としたうえで,開業免状を与えるべきである(同2節)。銀行は,開業免状を得て初めて何々国立銀行と公称し,その業を始めることができる(同3節)。開業免状は,銀行より新聞紙その他の方法で少なくとも60日間世上に公告すべきである(同4節)。営業継続期間は20年,20年経てばさらに免許を願い出る(同4条1節)。
 なお,取締役の衆議をもって申合規則を定めておく必要がある(条例4条3節,成規)。成規にその文例があり,取締役の選挙,役職員の数や任務,営業,株の譲渡などについて規定がある。
(2)株高は,100円をもって1株とし,1人何株でも所持できる(条例5条1節)。この株高を所持する者は,すべてその持高相当の権利がある(同2節本文)。ただし,大蔵省の官員,その他の官員とも,この銀行の事務に関係するものは,自分の名をもって株主となることを許されない(同但書)。
 「銀行ノ株主等ノ集議ニテ件々ノ議案ヲ論定スルニハ株主ハ1株ニ付1説宛ヲ出スヘシ」(条例5条9節)として,1株1議決権の原則が定められている。鎖店や元金高増減は,3分の2以上の株主の集議によるが(同8節・14節),この3分の2の算定については,「其株高ヲ以テ合計シテ其人員ヲ以テ算当スヘカラス」(同10節)とある。議決権の代理行使については,「株主等ハ委任状ヲ所持スレハ他人ノ名代トナリテ其高ニ応シ説ヲ出ス了ヲ得ヘシ」とある(同11節)。しかし「此銀行ノ支配人以下ノ役員ハ其名義ニテ銀行ノ株ヲ所持スルトモ其ノ株主ト認メサルニ付其者共並ニ其株ヲ借金ノ引当トシタル者ハ己ノ説ヲ出シ又人ノ名代トナルヲ得ス」と定められる(同12節)。なお,株主総会については,取締役の選挙などに関連して「株主等ノ集会」として定められる(申合規則文例)だけで,一般的な規定はない。 株主は,開業前に少なくとも元金高の5割を銀行に入金すべきである(条例7条1節)。他の5割は,元金高の1割で月賦とし,開業免状を得た月の翌月から入金する(同2節)。5割または月賦の入金を怠るときは,頭取・取締役においてその株を競売に出し,売払の上,入用を差引き,過金があれば元株主に渡す(同4節)。競売にしても買取る人がなければ,入金高は銀行に没入してその株を消し,それにより元金高が条例の定限より少なくなれば,頭取・取締役が補わなければならない(同5節・6節)。
 株主は,その営業についての損益を株高に応じて負担する(条例5条5節)。利益分配は,株高に応じて年2回なされる(同13条1節)。銀行が兌換停止や預金払戻停止により分散した場合,株主は,たとえ銀行にどのような損失があっても,その株高を損失するほかは別に分散の賦当は受けないし(同18条12節),銀行の分散・鎖店による清算の後,なお銀行紙幣が世上に残在していても,これは大蔵省で引換え,銀行の株主はなんらその責に任じない(同19条4節)。もっとも,発行紙幣兌換の事故,預り金引渡についての事故,手形を渡すについての事故の場合には,株主は各その株高に応じ別に出金して一時これを承弁すべきであるが,この出金はまったく一時承弁のためであって,銀行の都合次第でこれを各株主へ引戻すことができる(同11条5節)。
 株主は,「自己ノ勝手ヲ以テ此社ヲ脱スル」ことは許されない(条例5条7節)。すなわち退社は認められない。また株主は「陰ニ其元金ヲ引取リ他用ニ供スヘカラス」(同13節)として,元金の払戻は禁じられる。しかし頭取取締役の承認を得て株を譲渡することは認められる。すなわち「株高ハ全ク株主ノ所有物ナレハ頭取取締役ノ承認ヲ得銀行ノ元帳ニ引合セシ上ニテ譲渡ヲナス了勝手タルヘシ」(同3節)。申合規則文例によれば,株の譲渡は,頭取取締役の許可を得,銀行の元帳に引合せた上は,いつでもできるが,その株手形の書替をしないときは,銀行から割渡すべき利益金は,新故を論ぜずその株の名前人に渡す。また,株手形には頭取ならびに支配人が調印し,この株は銀行の元帳に引合せの上譲渡すると記載すべく,この株譲渡の節は,株手形を元株主より銀行に請取り,改めて新株手形を新株主に渡す。なお,株主は,その所有の株を引当として借財をしてはならない(条例5条13節)。
 銀行は,その元金の株を引当に取って貸金をしてはならず,また諸株の買主またはその株主となってはならない(条例11条3節)。自己株式の取得の禁止および他の株式の取得の禁止を含んでいる。ただし,貸付金が滞って銀行の損失となることがあれば,やむをえずその株を引当にとりまたは買取ることができるが,その株は遅くとも6ヵ月内に売払わなければならない(同4節)。なお,銀行の貸付金は1回につき元金高の10分の1を限度とするという大口融資規制がある(同1節)。
(3)役職員としては,まず,頭取,取締役がある。取締役は,5人以上たるべく,その内1人は頭取たるべきである(条例4条4節)。定款文例では,取締役から副頭取1人も選出されることになっている。また,条例には,頭取取締役等は,「支配人会計役書記役其他ノ役員ヲ定メ」とある。一方,紙幣寮に差し出すべき書類の文例では,銀行役人という称呼で,頭取,支配人,取締役を指すようである。また申合規則では,「銀行役人ノ事」として,「当銀行ノ役人等ト称スルハ」取締役およそ5人,内頭取1人,支配人1人,勘定方1人,帳面方1人,書記役等「都テ銀行ノ業体取扱ニ関係シタル人々ヲ云ナリ」とある。役人という称呼がよく使用されているが,その範囲は必ずしも一定しない。
 条例には,頭取,取締役中4分の3は銀行創立の地に1ヵ年は在住した者に限ること,および頭取,取締役は少なくとも元金30株以上を所持する者に限ることが定められ,その選任交代の手続は定款と申合規則に掲げるべきことになっている(条例4条4節・5節・7節)。成規に掲げる定款および申合規則の文例によれば,取締役を選挙すべき定式の会議は,毎年正月11日を定日とし,株主が銀行に集まって議す。この集合の日限・趣意は,1ヵ月前より頭取,支配人が公布する。取締役はまた,この集会の1ヵ月前に株主の内から3人の裁判役を選んでおく。裁判役は,選挙の議論を決断したうえ,選挙の始末および選ばれた新取締役の姓名を頭取,支配人に報告する。頭取,支配人は,新取締役に通達し,銀行で集会するよう申し込む。取締役の衆議で,その中から頭取1人,副頭取1人を選ぶ。頭取は規則に従い年限中勤めるが,取締役の3分の2以上の存意で退任させられうる。取締役はまた,支配人などの役人を選任する。頭取,取締役の会議で事を論決するときには,連席人数半以上の説をもって衆議と定める。
 頭取は,銀行の事務全体を注意して,すべてその責に任ずるが,新たに事を定めたり,これを更正・廃止したり,定例でない出納をしたりすることは,取締役の協議によらなければならない(申合規則文例)。頭取は,毎年選挙すべく,重年を妨げない(成規)。
 頭取,取締役は,上任の節に,忠実公平に事務を施行し,条例の要旨にたがわない旨の誓詞を紙幣頭に差し出す。
 副頭取は,頭取の欠席その他事故があるときに,その事務を代理するが,平日の勤めば取締役と同じである(定款文例)。
 取締役は,3ヵ月ごとにその内から1人を選挙して,検査役(ギンミヤク)たらしめる。検査役は,銀行の有高を計算し,勘定の差引を改め,帳面を検査し,銀行の営業が立ち行くかどうかを検査し,その?末を取締役の集会に報告する(申合規則文例)。また取締役の中1人が,為替掛を勤める(同)。
(4)国立銀行は,人口10万人以上の地においては50万円以下の元金では創立を許されず,10万円未満1万人以上の地ならば20万円の元金で創立できる。1万人未満3000人以上の地では,大蔵卿の詮議をもって,5万円までの元金でも創立が許されることがある(条例6条1節)。
 元金高の10分の6は,これにより公債証書を得,その公債証書を大蔵省に預け,銀行紙幣発行の引当とする。10分の4は,本位貨幣で積立て,引替準備とする(条例6条2節以下,成規)。元金は,株主の3分の2の集議により増減できるが(条例4条14節,成規),紙幣頭の承認を要する(同)。元金増加のときは,株主はその株数に応じて新規の増株を所持するの権がある(申合規則文例)。新株引受権である。頭取,取締役から株主に増株書込の事を通知し,増株書込をしない株主があれば,頭取,取締役の衆議で残株の処置をする(申合規則文例)。元金は,条例に定められた額よりは減少できない(条例4条14節)。減少の場合は,銀行の発行紙幣を紙幣寮に返上して焼捨の手続をし,その高だけの公債証書を取り戻し,準備金も減少する(成規)。株主は各株数に従いその割合に応じて減少する(定款文例)。
 利益配当は,利益金分割と呼ばれている。頭取,取締役は,毎年2回銀行の総勘定をなし,その純益を正算し・株高に応じて公平にこれを分割すべきである(条例13条1節)。その分割の前に,その計算を明瞭にして紙幣寮に差し出すとともに,利益の正算を株主一同へ通知し,かつ新聞紙上で世上に公告する(同2節・3節)。右利益金の内少なくとも10分の1以上の高を除き置いて,元金の2割に至るまで銀行の別段積金とし,臨時の費用に供する(同4節)。元金高の内を引き去ってはならないし,損失があって元金高が減少すれば,利益金の分割をやめてその不足を補うべく,もしその不足高が1度の利益金で補うことができなければ,何度でも利益金の分割を見合せて元高に復すべきである(同5節・6節)。
 銀行は,紙幣頭に年4回以上実際報告書を差し出す(条例12条1節,成規)ほか,諸種の報告が要求され,紙幣頭からの検査役の派出(条例17条)も定められている。
(5)定款変更は,取締役または株主3人以上で立議し,株主の集会で決議する(定款文例)。申合規則は,取締役3分の2以上の論に従って改正することができる(申合規則文例)。銀行は,3分の2以上の株主の説に従って,平穏に分散し鎖店することができる(条例19条1節)。この場合には,紙幣寮に報告するとともに,3ヵ月間東京大阪の新聞紙その他の手続で世上に公告し,発行紙幣の引換方その他銀行に属する取引の清算を公に世人に告知し,かつそのことを促す(同2節)。公告の日から,銀行は,引換えた紙幣で,預けた公債証書を取り戻すことができる(同3節)。

3 次に,明治9年の国立銀行条例・同成規を,明治5年のものと比較してみよう。
(1)創立について5人以上の発起人を要することは,「外国人ヲ除クノ外」という制限が付されたほかは,明治5年の条例と同じである(条例1条)。ただ,「5人以上結合シタル人々」(同),「5人以上ノ人員申合セ」(成規1条)というように,組合という称呼は用いられていない。紙幣寮へ創立願書を差し出し,創立証書・定款の差出方が命ぜられ,株主を募集し,入金せしめ,株主確定後ただちに集会を開いて取締役・頭取を定め,創立証書・定款を紙幣頭に差し出すのは,明治5年の場合とほぼ同じである。
 株金の募方も,以前と同様であるが,入金に当って,発起人は,金子と引替に入金受取証書を入金人に渡すことになっている(成規11条)。なお1株は,100円または50円または25円と定めることができる(条例28条)。
 創立証書に掲載すべき事項も,以前とほぼ同じであるが,営業地名は「銀行ノ本店及ヒ支店(若シ之アラハ)ヲ置クヘキ場所」,元金の高ならびにその株の内訳は「銀行ノ資本金額及ヒ株数」と改められ,その他の点も整備されている(条例2条)。創立証書の条項の更生についても定められるが,それは資本金の増減,本店転移,支店開設などに限られる(同4条)。定款については,成規6条に雛形が掲げられており,以前の文例に比して,本店,支店,資本金の称呼が用いられ,株券を「株式券状」と呼び,株主総会について詳細な規定を置いていることが目立つ。
 銀行は,開業免状を得て,開業できるが,「銀行ハ右ノ開業免状ヲ得テ始テ一団ノ会社トナリ何々国立銀行ト公称シ……国立銀行ノ事業ヲ経営スルヲ得ヘシ」(条例9条)として,会社としての成立がいわれている。
 なお,以前には申合規則で定めるべきものとされた事項が,定款に掲載すべきものとされていることが多く(条例14条),申合規則も定めることになっているが(成規61条),その雛形はない。
(2)資本金は,株式に分割し,100円または50円または25円をもって1株と定めるべきである。もっとも金額は均一でなければならないのであって,「1株100円ニ分配シタル銀行ノ株式ハ悉皆100円ノ金高タルヘシ50円25円ノ株式モ亦之ニ準スヘシ」。ただし,資本金10万円以上の銀行は1株100円または50円と定めるべく,資本金10万円未満5万円までの銀行は,1株50円または25円と定めるべきである(以上は条例28条)。以上の点は,定款で定める。
 株主は,各自の望に任せ幾株でも所持することができ,すべてその所持株高相当の権利を有し,銀行営業の損益を株高に応じて負担する(条例29条)。しかし,1株1議決権の原則は定められないのみならず,持株が多くなれば議決権個数が減ることになっている(成規44条)。この点は,議決権の代理とともに,後に株主総会のところで述べる。なお,所定の官員が株主になれないことは,以前と同様である。
 銀行は,「株主牒」を製し,各株主の姓名・住所など,各株主の所持する株式の番号・箇数,入社の年月日,退社の年月日を記載する(条例34条)。株主名簿である。創立証書に記名する者は株主であるから,株主牒にその姓名を登記すべきであるが,「其他何人ニテモ(外国人ヲ除クノ外)爾後其銀行ノ株主タラン●ヲ同意シ随テ其姓名ヲ株主牒ニ登記シタルモノハ又同シク其銀行ノ株主タルノ権利アルヘシ」。株主牒は,開業免許状を受けた日から本店に備え置き,株主は営業時間内いつでも検閲できる。銀行がその検閲を拒んだときは,株主は,書面で地方官庁へ紙幣頭への照会を乞い,照会を受けた紙幣頭は,ただちに官吏を派遣して本店を検査させることがある。ただし,銀行は,新聞紙その他の手続をもって報知して,1ヵ年中日数30日を過ぎなければ,いつでも右検閲を停止することができる(以上は条例36条)。株主牒に故なく姓名を記入され,妄りに除名され,退社の記載を遷延されなどして,そのために妨碍を受けるときも,その者は書面で紙幣頭への照会を乞い,紙幣頭はただちに銀行に命じて修正させる(同37条)。
 株主は,開業前に少なくとも資本金総額の10分の5を入金すべく,残り10分の5は10分の1の月賦とすること,月賦入金を怠ったときは株式没入となることなどは,以前と同様である(条例30条以下)。
 「株式券状」すなわち株券については,成規25条には,「国立銀行ノ株主タルモノハ其所持スル所ノ株金総入金済ミトナリタル時ハ社印ヲ鈐シタル株式券状ヲ1株ニ付1通宛領受スルノ権利アルヘシ」とあり,成規6条の定款雛形では,第4条に「何人タリトモ(外国人ヲ除クノ外)苛モ当銀行ノ規則ヲ奉シテ其株式ヲ引受ケタルモノハ都テ当銀行ノ株主タルヘシ」,第5条に「各株主タルモノハ其引請ケタル株式1箇ニ付キ株式券状1通宛ヲ領受スルノ権利アルヘシ」とあって,入金と株券受領の権利との関係は,必ずしも明らかでない。株式券状の雛形(成規25条)によれば,表面には,表題と1株の株主たることの証拠として付与する旨,および「此株式券状ヲ売却譲与セント欲セハ当銀行へ持参スヘシ銀行ニ於テ至当ノ検査ヲ逐ケ此券状裏面ノ枠内ヘ頭取支配人記名調印ノ上之ヲ差戻スヘシ」と記載され,年月日,銀行印,頭取と支配人の各姓名印がある。裏面には,年月日,譲渡人記名調印,譲受人記名調印,頭取記名調印,支配人記名調印の各欄が数列並んでいる。
 株式は,所定の手続により売買譲与することができる。ただし,銀行は,新聞紙その他の手続で報知して,1ヵ年中日数30日を過ぎなければ,いつでもその株式の売買譲与を停止することができる(条例38条)。株式を売買するには,株式売買証書を作り,売渡人,買受人の双方が証人の眼前で連印し,株式券状とともに銀行に差し出す。頭取,支配人は,株式売買の簿冊へその?末を登記し,その株式券状の裏面へ記名調印し,証書と株式券状の間に割印を押捺し,再びその株式券状をその人々へ渡す。右の手数が済むまでは,売渡人を右株式の持主と定める(成規27条)。定款雛形(成規6条)第6条には,当銀行の株式は,条例成規の規定に従い,頭取取締役の許可を受け,当銀行の簿冊に引合せた上で売買譲与できること,株式券状の書替をしないときは,当銀行より割渡すべき利益金は,新故を論ぜず株式券状の名前人へ渡すことが定められている。株主が死去し,名代人が株式を売却譲与するときは,この名代人は,株主でなくても株主同様の記名調印ができる(条例39条)。また,株主が死去して,相続人もしくは後見人でその株式を譲受けるべき者は,銀行の要求する然るべき証拠を差し出した上で,その銀行の株主として株主牒の記載に入ることができる(成規30条)。なお,株式売買の簿冊は,毎半季定式総会以前日数15日の間は閉鎖し,新聞紙その他の手続で世上に公告して,一切その事の取扱に従事しないことができる(成規29条)。
 株式券状が磨滅敗裂などしたときは,その趣を書面にして書替を求め,焼亡紛失したときは,その事実を明瞭にしたため,2人以上の証人を立てておのおのこれに記名調印し,新株式券状の受取方を求めることができる。いずれの場合も,銀行より差図する手数料を払うことを要する。
 銀行の株式取得などの制限は,自己株式の取得の規定が整備された(条例58条)ほかは,従前とあまり変らず,株主の責任の点も以前とほぼ同様である。
(3)機関に当る部分において,明治5年の条例・成規と大きく異なる点は,株主総会に関して詳細な規定が置かれていることである。まずこれを考察しよう。
株主の議決権については,成規に「株主発言投票ノ事」として定められる。すなわち,株主は,各所持する株数10箇までは1株ごとに1箇宛の発言投票をなすべく,11株以上100株までは5株ごとに1箇宛を増加し,101株以上は10株ごとに1箇宛を増加することと定めるべく(成規44条),定款雛形(成規6条)24条に同様の規定がある。発言投票は,本人でも代人でもよいが,代人は株主に限られ,委任状を差し出すことを要する(成規46条,定款雛形25条)。銀行の役員は,他人の代人として発言投票する権利を有せず,また株式券状を借財のためその銀行に質入した者は,総会において自身または他人の名代としても一切発言投票の権利はない(成規45条,定款雛形26条)。
 株主総会は,第1次の総会を,銀行が開業免状を受けてから3ヵ月以内に頭取取締役の取極めた時日場所において執り行う(成規33条,定款雛形13条)。第2次以後の総会は,毎年少なくとも両度宛執行すべく(条例67条),毎年第1月第7月(いずれも然るべき日に)頭取取締役の取極める時日場所において執り行うもので,これを定式総会と称する(成規33条・34条,定款雛形14条・15条)。現在の定時総会に当る。定式総会においては,総勘定における正算指示,利益金分配,頭取・支配人より差し出す平常処務を記載した書類の稽査審按などが行われる(成規34条)。取締役の選挙は,毎年第1月の総会で行われる(定款雛形14条但書)。その他の総会は,臨時総会であって,臨時の事件を評議処分する(条例67条,成規34条)。
 総会において事務を評議処分するに当っては,株主の総員(本人または代人とも)の10分の5以上出席するのでなければ,(利益金分配の報告1件を除くのほか)何事をも評議処分できない(成規39条,定款雛形18条)。定足数の定めである。総会における議定は,多数決による(成規42条,定款雛形22条)。定款変更については,特別の決議方法が定められ,格段決議と称せられる(条例68条)。現在の特別決議に当る。これは,議按を出し,株主臨席の総員(本人代人を論ぜず)の4分の3以上の同意をもって一旦その大体を決定し,ついでその旨趣を詳述して報告し,その後14日から1ヵ月以内に執行する総会において,臨席株主総員が同意した発言投票の多数をもって確定するものである(条例69条)。
 総会を招集するには,取極めた時日場所を報告書に記載し,もし格段決議に付すべき事項があればその大旨をも加載し,少なくとも日数7日以前に総株主に通知すべきである(成規35条)。頭取取締役において適当と思考するときは,いつでも臨時総会を招集することができる(成規36条,定款雛形16条)。また,10名を下らず,その所持の株数が総株の5分の1以上に及ぶ株主は,臨時総会の招集を請求することができる。この株主の請求は,書面にしたため,総会を請求する目的事件を詳載して,頭取取締役へ送達すべきである。頭取取締役は,右請求書を受け取れば,ただちにその総会の招集にとりかからなければならない。取締役が請求書を受け取った日から7日以内に招集の手続をしないときは,請求人みずから招集するか,他の株主と相謀って招集することができる(以上は成規36条以下,定款雛形16条以下)。
 総会の刻限より1時間を過ぎても定足数に達しないときは,この会日より7日目に延会し,この会と同じ場所刻限において執り行う(定款雛形19条)。
 総会の議長は,頭取(または副頭取)がこれに任ずる(成規40条,定款雛形20条)。議長が総会の刻限より15分を過ぎてもなお臨席しないときは,出席株主の内より1人を公撰して議長とすることができる(成規41条,定款雛形21条)。総会において事を議定するには,可否または同意不同意の発言投票の多数をもって決定する(成規42条,定款雛形22条)。発言投票の数相半ばするときは,議長の助説もしくは決票をもって裁決する(成規43条,定款雛形23条)。決議については,その次第を簿冊に登録し,決議済みの旨を加載し,議長がこれに検印して,後日の参観証拠に備え置くべきである(成規42条,定款雛形22条)。
 銀行の役員と称せられるのは,取締役(5人以上),そのうち頭取1人と,もしあれば副頭取,支配人,書記方,出納方,計算方,簿記方である。もっとも銀行の便宜により,これを廃置兼摂し,もしくはその他の役員を設置してもよい(以上は成規48条)。もっとも取締役や頭取は必須機関である(条例15条)。なお,銀行役人という称呼は,もはや用いられていない。
 取締役は,5人以上であることを要し,定式総会において株主一同の投票をもって選挙する。定員を欠くときは速かに補うべく,不時に欠員があるときは,臨時総会において選挙する(以上は成規48条・55条)。取締役の4分の3は,その銀行創立の地において上任前1ヵ年以上在住した者に限る(条例15条)。もっとも成規(52条)では,取締役の3分の2は,本店設立の地方において少なくとも1ヵ年住居したものとなっている。取締役になる者は,30株または60株のいわゆる資格株を有していなければならない。すなわち,資本金10万円以上で,1株100円の銀行であれば30株,1株50円の銀行であれば60株,資本金10万円未満5万円以上で,1株50円の銀行であれば30株,1株25円の銀行であれば60株である(条例15条,成規51条)。各取締役は,その所持の株式券状30箇または60箇をその銀行に預け,その代りとして禁授受の3字を付した保護預り証書を請取り置き,取締役奉職中決して引出すことはできない(成規53条,定款雛形7条)。また,一旦破産した株主は取締役になれない(成規51条)。取締役の在職年限は,1期必ず満1ヵ年である。ただし重年上任を妨げない(以上は成規59条,定款雛形8条)。
 取締役は,同僚中から入札公撰をもって頭取(および副頭取)を選挙する。その在職年限も満1ヵ年で,重年上任を妨げない(以上は成規50条・59条,定款雛形8条)。ただし,取締役3分の2の協議をもって退任させることができる(定款雛形8条)。頭取の職務権限のうち,新たに事を興しまたは更正・廃止し,定例でない出納をするなどについては,株主総会の決議を経るべきものとされている点が,従前と異なる。
 頭取取締役は,その職務を行うために,少なくとも毎月3度以上同僚中の集会をし,その事務を評議処分する。その集会の体裁方法は,総会の手続に準拠し,銀行において然るべき規程を立てる(成規58条)。これは取締役会に当る。なお,以前にあった検査役や為替掛の定めは存しない。
(4)国立銀行の資本金額は,10万円を下りえない。人口10万人以上の地では,20万円未満の資本金で創立することは許されない。もっとも時宜により紙幣頭がさしつかえないと思考し,大蔵卿への稟議を経れば,5万円以上10万円未満の資本金でも創立を許すことがある(条例17条)。
 資本金額の10分の8は,政府発行の公債証書で出納寮へ預ける(条例18条)。この規定は,明治11年太政官布告5号により,国立銀行より発行する紙幣は資本金の10分の8たるべく,各銀行はその紙幣の抵当として発行紙幣の高に応じ公債証書を出納局に預けるべきことと改正された。資本金額の10分の2は,通貨をもって銀行に積置き,銀行紙幣の引換準備に充てる(条例20条)。この規定は,明治16年太政官布告14号により,紙幣下付高の4分の1に相当する通貨をもって発行紙幣引換の準備に充てるべきことと改正された。銀行では,総会の格段決議を経て,紙幣頭の承認を得れば,資本金額を増加することができる(条例40条)。増加は,株主の所持株数の割合に準じてなされるが,時宜により新たに株主を募ることもある(定款雛形3条)。入金済のうえ紙幣頭へ資本増加証書を差し出す(条例40条,成規14条)。また,総会の格段決議を経て,紙幣頭の承認を得れば,資本金額を減少することができる(条例42条)。この決議を施行するには,その施行の日限より少なくとも3ヵ月以前に,資本金の減少額と残り資本金額とを記載した報告を作って,預り金のある得意先に送達すべく,かつ,減少しようとすることを,銀行所在地の3種以上の新聞紙をもって3ヵ月以上毎日公告すべきである(条例42条)。銀行に貸金,預け金などがある者は,支払期日未到来でも,減少を施行すべき日限前1ヵ月の間であれば,その償却を求める権利がある。この場合,定期預け金がある者は,その元金ならびに当日までの利息を受け取る権利があり,その他の期限未到来の銀行より受け取るべき勘定がある者は,時の相場をもって支払期日までの利息を引き去った残金高だけを受け取る権利がある(条例43条)。減少は,株主の所持株数の割合に準じてなされる(定款雛形3条)。諸般の手続が終れば,紙幣頭へ資本金減少証書を差し出す(条例44条,成規15条)。
 利益配当は,利益金分配と呼ばれている。頭取取締役は,半季ごとに銀行の総勘定をなし,総益金の内より諸雑費ならびに損失補償の金額および滞貸金の金額(もしあれば)を引去り,その余をもって純益金となし,またこの内より次に規定する積金を引去り,その余の金額を総株主に分配すべきであるが,右の利益の計算は,株主に分配する前10日以内に紙幣頭へ差し出し,その承認を得て後,株主一同へ通知し,かつ新聞紙をもって世上に公告し,株主に分配する(条例79条)。次に規定する積金とは,資本金の10分の2に至るまで毎半季純益金の内より少なくとも10分の1宛を積金として非常の予備に供するものである(条例80条)。しかし明治16年太政官布告14号により,利益金分配については,総益金の内より諸雑費ならびに損失補償および滞貸金の準備を引去り,その余をもって純益金となし,これを総株主に分配すべきものとされ,積金の規定は削除されている。利益金分配については,条例には株主総会の議を要する旨の規定はなく,成規62条には「頭取取締役ハ(株主ノ総会ヲ経テ)銀行ノ利益ヲ株主銘々所持ノ株高ニ応シテ割渡スヘキ旨ヲ総株主ヘ通知スヘシ」とあり,定款雛形18条は,総会の定足数を定めるに当り,「利益金分配ノ報告1件ヲ除ク」としている。総会の報告事項ということであろう。
 株主は,銀行の営業時間中であればいつでも,その銀行が実際に記入する所の諸簿冊および報告計表を点検することができ,銀行がこれを拒むときは罰金の制裁がある(条例72条)。また,銀行の総株の5分の1以上を所持する株主からの請願があれば,紙幣頭は,官員を派遣しまたは地方官へ委託してその銀行一切の業体を検査させることがあり,検査報告書の写は,銀行の本店と検査を請願した株主に下付される(条例75条)。その他,紙幣頭の検査権およびその限界,銀行より紙幣頭への諸報告について,詳細な規定がある。
(5)定款変更は,総会の格段決議を要し,紙幣頭の承認を受けなければならない(条例6条70条,定款雛形34条)。格段決議で確立した事項で現に施行するものは,その事項を正しく記載した写を各株主に分賦しなければならない(条例71条)。3分の2以上の株主の協議によって平穏に分散または鎖店できるが,その実行方法は従前とほぼ同じである(条例104条以下)。
4 国立銀行条例は,銀行とくに紙幣発行銀行に関するものであって,政府の干渉・監督を定めることがきわめて多い。しかしこれを会社組織に関する規定としてみるときは,株式会社組織を定めるものとして,かなり整備されたものということができる1)。銀行創立は,政府の許可にかかるとはいえ,公募によるものとしている。株主の数がそれほど多いことは予定していないようであり,株式の譲渡は会社の承認を要するが,株券や株主名簿もおおむね整えられている。とくに明治9年の条例・成規にみられる株主総会の規定は,まったく詳細である。総会において取締役を選任し,取締役の互選で頭取(代表取締役)を互選するという組織も,株主の帳簿閲覧権も,昭和25年の商法改正においてはじめて,アメリカ法上の制度を導入したとされるものである。会社の計算も,その基本において整っている。国立銀行の創立が,明治10年ごろより急増し,明治12年に153行に及んだということが,株式会社制度に対する一般の理解を深めるのに資したであろうことは,想像に難くない。


1)国立銀行は,アメリカのナショナル・バンクにならったとされるが,ナショナル・バンクの組織が当時どのようなもめであったか,また会社組織という面でも国立銀行がナショナル・バンクにならったのかは,今のところ詳かにしない。

Ⅲ ロ氏草案

1 総論
1 ロ氏草案は,現在の会社に当るものを,「商社」と称している。旧民法において,現在の組合を会社と称したのに対応する。商社に関する規定は,草案第1編第6巻にあり,「総則」(67条―80条),「第1章 合名会社」(81条―153条),「第2章 差金会社」(154条―174条),「第3章 株式会社」(175条―318条)から成る。「各国商法中商社ニ関する条例ニシテ其完否粗密ヲ論スルトキハ独逸商法ノ右ニ出ルモノナシ」(第6巻商社の解説)とあり,ドイツ法を範としている点が多いが,まったくこれにならっているわけではない。

2「商社ハ共同シテ商業ヲ営ムカ為メニスルトキノミ之ヲ設立スルヲ得」(67条)。ただし,株式会社は,商業取引をなすを本旨としなくても,みな商社とみなされる(176条)。「行政及ヒ警察ノ区域ニ関スル事業ヲ目的トスル商社」の設立には,政府の許可を受けることを要するが(69条),その他の商社の設立は許可を要しない。商社は,社名を設け,かつ設置の場所を定めなければならない(70条)。現在の商号は,草案では「商業屋号」,「屋号」と呼ばれ(第1編第3巻),商号登録簿に登記すべく,登記により一地方においては屋号の専有権が生ずる(25条)。通例は,屋号主の氏をもってその営業上の屋号となすべく,屋号主数名あるときは1名以上の氏に,その会社なることを表わす付号を加えるべきであるが,「責任有限ノ同志社ノ氏ハ屋号中ニ参用スルヲ得ス」(26条)。社名は,会社の屋号である。なお,法律に背戻する目的の会社は,初めより無効であり,公共上または風俗上の秩序を妨害すべき営業をなす会社は,判決により解散させることができる(67条)。

3 「各商社ハ特別ノ財産ヲ有シ又独立シテ権利義務ヲ有スルモノトス殊ニ社名ヲ以テ金銭ヲ貸借シ動産不動産ヲ所得シ又訴訟ニ付テハ原告又ハ被告トナルヲ得ヘシ」(71条)。解説では,従前はローマ法の先例に従い会社の契約を他の契約のように社員相互の間の契約上の関係と同一視したが,今日の法理見解では,商業上の需求に応じ,会社をもって,法律上1箇独立のものとみなす,「然レトモ真成ナル意義ニ於テノ無形人ト断言スルナシ」,会社の権利義務は,社員個人にではなくて,会社全体に属するものとする。商社をこのような性質のものと解するときは,民法上の尋常の会社とおのずから区別がある(第6巻の解説)。「商社ハ無形人ニ非ラスト雖トモ法律上ニテ無形人ノ如クニ見倣サルルコト往々之アリ……商社ハ法律上一種特別ノモノ」(71条の解説)とされている。無形人とあるのは,いうまでもなく法人のことである。商社一般について,法人ではないが,ある種の団体性を認めるという趣旨であろう1)。

4 草案において認められた会社の種類は,合名会社,差金会社,株式会社の3種である。差金会社は,合資会社に当るが,無限責任社員がなくてもよい独特の考案された会社形態である。株式差金会社(株式合資会社)は,株式会社と僅かに異なるだけで特別の会社の種類を設ける理由がないとして(第2章差金会社の解説),採用されていない2)。なお,イギリスの合本会社に「ストック・カンパニー」と仮名が振られている(69条の解説)。また,商社総則において,商社ではないが,当座組合(72条),損益共通契約(73条),匿名会社(匿名組合)(74条以下)について規定を設けている。
2 合名会社
1 合名会社に関する定めは,「第1款 会社ノ設立」(81条―88条),「第2款 会社契約ノ変更」(89条―95条),「第3款 社員相互ノ間ノ権利義務」(96条―117条),「第4款 社員ノ他人ニ対スル権利義務」(118条―130条),「第5款 社員ノ退社」(131条―139条),「第6款 会社ノ解散」(140条―153条)から成る。
 合名会社とは,「2人以上7人以下資金ト労力又ハ有価物件ト労力トヲ集合シテ共有資本ヲ造成シ共通計算ヲ以テ商業ヲ営ミ其責任集合資産ニ止ラサルモノ」(81条)である。社員を7人以下と定めたのは,イギリスの法律に従ったものである(81条の解説)。なお出資は,差入資本と呼ばれている。
 社名は,「全社員又ハ1名又ハ数名ノ社員ノ本姓ヲ参用シテ其会社タル性質ヲ表スヘキ附号ヲ加フ」べきである。会社が既存の他人の営業を継続するときは,その旧社名を保続できない(以上は82条)。

2 合名会社を設立するときは,契約書を作ることを要する(83条)。この契約は,会社契約と呼ばれる。設立後14日以内に設立の旨を商業簡明簿に登記し,公告すべきである(84条)。現在の商業登記簿に当るものは,商業登録簿と呼ばれているのに(第1編第2巻),商社のところでは商業簡明簿となっている。単なる不統一かと思われる。登記事項は,会社の種類・目的・社名・本店設置場所,各社員の姓名住所,設立年月日,存立期限を約定したときはその期限,商務の専権を一社員に委任したことを契約書に定めたときはその社員の氏名である(85条)。登記した事項の変更は,7日以内に登記し,公告すべきである(86条)。登記および公告前には,会社は開業できず(87条),登記の日より6ヵ月間に開業しないときは,その登記および公告は無効とされる(88条)。

3 会社契約は,総員の同意によるのでなければ変更できない(89条)。社員は,契約上の高のほかに,その差入資本を増減し,または損失によって減少した高を補充する義務はない(90条)。社員は,総社員の承諾を得なければ,自己の差入資本または持部高を減少することができない(91条)。持部高とは,現在の持分である。社員は,総社員の承諾を得なければ,他人を入社せしめまたは自己の代員とすることができない。ただし,契約に反対の明条がなければ,亡社員の相続人は,本員の嗣員となることができる(92条)。なお,社員が他人(副社員)を自己の持部高に加入させるのは,損益共分であって(94条),副社員は社員となるのではない。また,会社
契約中の箇条を会社が実行しなかったときは,その箇条は後来社員または他人に対してこれを践行させることができないという規定がある(95条)。解説によれば,法律は施用されないことによって効力を失うという原則を会社契約においても通用するもので,例として,支配人の選任は総社員の同意を要する旨の定めがある場合に,1社員が支配人を選任したのに,総社員が異議を述べなかったときは,後日に同じようなことがあっても異議を唱えられないとされている3)。

4 社員相互の間の権利義務は,会社契約によって定まる(96条)。会社契約に定則を設けない事項や会社契約施行上の事項は,社員同議の多数で決する(97条)。会社の目的に反するか目的を越える業務・社務では,総社員の同議を要する(98条)。会社の業務・社益計画については,各社員同等の権利を有し,差入資本の額によって社員の参決権利に等差を立てることは許されない(99条)。しかし会社契約によって業務を1社員または数社員に終始委任することはできる(99条)。この社員は,業務担当社員と呼ばれ,数人あるときは,業務の取扱はその多数決による。業務取扱にあずからない社員は,いつでも,業務景況の詳告および会社牒簿書類の検閲を要求することができる(100条)。各社員は,会社に対して誠実信義を尽くし,また尋常商人の自己の業務におけるとひとしい勉励注意をする義務があり,自己の義務を侵して会社に生ぜしめた損害は補償しなければならない(102条)。社員が会社契約上の承諾を得ないで自己の計算または他人の計算をもって,会社の商業区域内に属する取引をなし,あるいはこれらの取引に参与するときは,その社員を除名するとも,会社の計算をもってその取引を担当するとも,会社の選択に任せ,かつ会社に生ぜしめた損害を弁償させる(112条)。
 社員が差入れた資本は,会社の所有であって,契約で確定した価額を付し,会社の財産目録中に記入する(103条)。労務出資も認められる(106条)。社員が契約上の差入資本を納めないときは,怠納者を除名するか,100分の7の利息を出させるかは,会社の選択にあり,また会社は,いずれの場合でも損害の弁償を要求できる(107条)。各社員が会社の損益を共分する割合は,差入資本の価額に応ずる。もっとも契約により他の割合を定めることができる。労務出資の価額を契約中に定めなかったときは,各般の事情を勘酌して定める(113条)。社員の1名または数名が,他の社員を除いて自己にのみ特別の利潤の配当を受ける約定は,無効である。しかし,一,二の社員に対して,特殊の事情があるときは損失の配分を免れさせる約定は,無効とは限らない(114条)。
5 社員の所業および取引によって会社に得た権利は,業務に参与しないことを登記しない各社員において全部執行できるし(118条),会社の義務も権利者から代理権ある各社員に対し全部執行させることができる(119条)。会社は,業務に参与しないことが公然でない社員の明言または時機に従って会社のために執行した所業および取引から,直接の権利および義務を得る(120条)。会社契約またはその他の約定をもって業務担当社員の代理権利の区域に制限を立てても,その制限は他人に対して無効である(121条)。以上は,社員の代理権を定めるものである。もっとも社員相互の関係では,1社員が会社契約または商法中の規則に照準して会社のために執行した各種の所業および取引の結果は,自他の社員においてその持部高に応じこれを承認する義務がある(117条)。
 会社の義務については,まず会社財産をもってこれに充て,次いで各社員の全財産をもってこれに充てる(122条)。社員でないのに,本姓を社名に顕わし,または業務に参与する者,および定額の差入資本に対する責任を限らないで社員の通常の権利義務(通常の損益という意味)を共分する者も,登記の有無にかかわらず社員と同様の責任を負う(123条)。新たに加入する社員は,とくに取極めがなければ,加入の日以後に生じた会社義務に限り責任を負うが(125条),従前の取引より生ずる利益の配当を受けるときは,その取引のため他人に対し責任を負わなければならない(126条)。
 会社財産は,分配前には会社義務践行のためでなければこれを要求できず(127条),会社財産中の持部高は,会社の承諾なしに引出しうる部分に限って社員の私債に充てることができ(128条),会社に対する債権債務と社員に対する債権債務との差引勘定は,会社財産分配前には許されない(129条)。これらは,会社財産と社員の私有財産との分離を貫いたものである(127条の解説)。そして,随意に社員が持部高を減少しまたは引取ることがあって,会社の債主がこのために会社財産からの弁償を減少されまたは障碍されたときは,その債主は,このことを聞知した後1年以内に異議を申し立てることができ,これにより持部高の減少または引取がなかったものとみなされる(130条)。

6 社員が退社するのは,除名のほか,随意の退社(6ヵ月前に予告して,年度末に退社。重要の事由があるときはこの限りでない。133条),死亡(相続人がないとき),独立を失うこと,倒産の各場合である。退社は,7日内に登記・公告を要する(132条)。1社員の退社により,会社は自然解散とならない(134条)。退社員には,持部高を精算して払渡される(136条以下)。会社の義務に対する退社員の責任は,退社後1年で消尽する(139条)。
 会社の解散事由は,期限の経過,会社契約に定めた解散事由の発生,総社員中4分の3以上の同議決定,会社の倒産,判決である(140条)。前3者の場合には,協議のうえ総社員または一部社員において会社を保続することができ,保続に加わらない社員は,退社員として取り扱われる(143条)。判決による解散は,会社が不法な事業や公序良俗に反する事業を営むとき,または会社の目的を達することができず,もしくは会社の関係を維持できない事由が起って,社員を除名してもこれを排除できないため,社員から解散を発議したとき,なされる(142条)。解散したときは,会社財産分配のため,社員の多数決をもって計算者を選任する(146条)。解散と計算者は,7日以内に登記・公告を要する(144条)。会社の関係は,解散によって尽きたものとし,会社の営業を停止し,倒産の場合を除き,会社財産を持部高に応じて各社員に分配する(145条)。計算者は,常務を結了し,清算して,残余財産を社員に分配する(146条・148条以下)。会社の義務に対する社員の責任は,その義務につきもっと短い期満得免期限(時効期間)がなければ,会社解散後5年の経過をもって消尽する。ただし,未だ分配しない会社財産が現在するときはこの限りでない(153条)。

3 差金会社
1 差金会社は,旧商法以後は合資会社と呼ばれる。「差金」には,「コンマンジート」と仮名が振られている(156条)。現在の合資会社も,各国の合資会社も,無限責任社員と有限責任社員とから成るが,ロ氏草案の差金会社は,有限責任社員のみからでも成りうる独特の会社形態を考案したものである。旧商法の合資会社もこれを引き継いでいる。合名会社と株式会社の中間形態である(第2章差金会社の解説)。1892年のドイツ有限会社法において初めて考案された有限会社と対比して,興味深い。有限会社が株式会社に近いのに対し,差金会社は合名会社に近い。ただし,この会社形態は,明治32年商法では採用されなかった。

2 差金会社は,商社の社員中1名または数名の責任について別段の契約がなければ,総社員が差入財産のみをもって責任を負うものである(154条)。有限責任社員だけでよいが,無限責任社員があってもよいわけである。社名には,無限責任社員の本姓のみを参用し,必ず社名の終尾に差金なる語を付すべきである(156条)。し
たがって有限責任社員だけのときは,人名を用いることができない(同条の解説)。会社の決議によって社員の差入財産を減額したときは,差金なる語のほかになお減額(レツシールト)なる語を社名中に付加すべきである(157条)。合名会社に関する条則は,別段の規定がない以上,差金会社に準用される(174条)。

3 会社の設立について,契約書の作成,登記・公告など,合名会社の場合と同様であるが,契約中および登記・公告中に,会社資本の総額,金額に引直した各社員の財産差入高,業務担当社員または頭取の責任の有限または無限の定めを掲載しなければならない(155条)。

4 社員7名未満の会社では,契約に他の取極めがなければ,各社員は,会社を代理する同等の権利義務を有するが(159条),会社契約によりとくに代理権ある社員を定めることもでき,これら代理権ある社員は,業務担当社員または業務執行者と呼ばれる。しかし,社員7名以上の会社では,会社契約によって,また後日必要となったときは社員の4分の3以上の多数決をもって,頭取1名または数名を選定すべきである。数名を選定したときは,各頭取が独立で会社のために業務を取り扱うことができるか,その中数名または全員でなければ取り扱うことができないかを,同時に取り極めることを要する(160条)。業務担当者または頭取は,裁判上と裁判外とにかかわらず,すべて会社を代理する権利を専有し(161条),その代理権の制限,ならびにこれらの者が業務取扱上犯した不正の所業は,良心にて(善意で)取引をした他人に対しては無効とされる(162条)。
 業務担当社員または頭取を選定した場合には,株主総会に類似した会議が必要である。すなわちこれらの者は,年々1回以上,また社員中4分の1の申立により臨時に,会議の目的と要旨を示して,総社員を会議のために招集しなければならない(169条)。毎年の通常会は,事務年度が終った後ただちに開くべく,ここでは前年度の業務・效蹟の明細書と簡明に製した財産比較表につき出席社員の多数による認定を受けなければならず,この明細書および比較表は,遅くとも会議の14日前に各社員に送付すべきである(170条)。これ以外の決議事項は,会議の要旨を遅くとも14日前に各社員に報知し,総社員の過半数が出席してその多数で決議し,かつ14日後に再び集会を開いてその出席人員の多数により認定されたときは,各社員に対して効力がある(171条)。ただし,定款の変更は,社員7名未満の会社では,総社員の承認を要し,社員7名以上の会社では,社員中4分の3の多数による決議でなしうる(173条)。

5 社員は,自己の計算で,または他人と共同して,会社営業と同種類または異種類の商業取引,起業または営業をすることができる(158条)。この点合名会社の場合と異なる。また各社員は,業務を担当すると否とを問わず,いつでも業務の景況および效蹟を尋問し,業務を監督し,その監督上意見を申し立て,商業帳簿その他会社の書類を閲覧・検査する権利がある(168条)。また社員は,会社の承諾を得て,持部高を他人に販売譲与することができる(163条)。
 会社の義務については,会社財産と,本姓を社名に加えた社員の全財産をもってこれに充て,未だ会社に差金を払込まない社員は,この差金額を会社の義務に充てるべきである(165条)。また会社契約または会社決議によって,会社財産で債主の弁償を尽くしえないときに,業務担当社員または頭取の総員またはその中の幾員の全財産をもって連帯してその業務取扱中に生じた会社の義務に充てるべきことを定めることができる(166条)。この無限責任は,業務担当者または頭取の解任のときは,その解任の時より1年の経過をもって消滅する(166条)。
 利金(利息のこと)または利益配当は,損失により差入財産が減額した間は,社員に払渡すことができない。もっともすでに払渡した当然の利金または利益配当は,爾後の損失を補うために還納させることはできない(172条)。

4 株式会社
1 株式会社に関する定めは,「総則」(175条―178条),「第1款 株式会社ノ創起及設立」(179条―199条),「第2款 社名及社印」(200条―203条),「第3款 株主名簿」(204条―207条),「第4款 株式」(208条―218条),「第5款 頭取及ヒ取締役」(219条―235条),「第6款 総会」(236条―248条),「第7款 社名ノ変更及会社位置ノ移転」(245条―248条),「第8款 記名株券ヲ無記名ニ変更スル事」(249条―253条),「第9款 総資本額又ハ株金額ノ増減」(254条―260条),「第10款 申合規則ノ変更」(261条),「第11款 株金払込」(262条―265条),「第12款 会社ノ義務」(266条―274条),「第13款 会社ノ検査」(275条―278条),「第14款 頭取及ヒ取締役ニ対スル訴訟」(279条・280条),「第15款 会社ノ解散」(281条―292条),「第16款 会社ノ決算」(293条―308条),「第17款 罰則」(309条―318条)から成る。
 株式会社は,社員7名以上の商社であって,その資本を確定の平均額(株金)に分ち,流通しうべき株券状を発行し,社員(株主)はその代理者でないものである(175条)。責任の有限を含めなかったのは,頭取に無限責任を負わしめうるとした(228条)からである(175条の解説)。これを除いて,株式会社の義務については,会社財産のみをもってこれに充てる(178条)。
 株式会社の社名は,社員1名または数名の本姓を参用することができず,他の株式会社と同号であってはならず,また必ず責任有限(リミチールテ,ハフツング)なる語を社名に加えるべきである(177条)。
 草案は,定款を「申合規則」と称している。旧商法は,合名会社・合資会社について会社契約,株式会社について定款の語を用い,明治32年商法において,いずれの会社についても定款と呼ばれるに至った。また草案で,「頭取」は,昭和25年改正商法以前の取締役(代表権を有する)に,「取締役」は,監査役に当る。旧商法に至って,取締役,監査役という称呼が用いられた。

2 株式会社の創起(発起)には,4名以上の発起人を要する(180条)。発起人は,会社の起業目論書および仮申合規則を立案し,各自これに署名し,裁判所または公証人の奥印を受ける(180条)。起業目論見書に記載すべき要件は,社名,会社設置の地名,起業の目的および原由,株式会社であること,会社資本の総額,株式の総数,1株式の金額,会社資本使用の概算,発起人の姓名および各発起人において引受けるべき株式,創業費用を要するときこの金額を支給するため株式申込の際ただちに1株毎に納めさせるべき高,裁判所または公証人の奥印を受けた発起人の署名書である(181条)。申合規則の記載事項は,定められていない。設立に政府の許可を要する会社では,創起の許可を受ける(182条)。そして起業目論見書を公告して,株金を募集する。仮申合規則は,申込人に展閲させ,請求により交付する(183条)。株式申込のときは,自己の姓名および引受けようとする株数をみずから記入する。代理人により申込むこともできる(184条)。株式引受の申込をしたときは,会社設立の上はその社員に列することを承諾し,申合規則のとおり毎株につき要求ある払込をなすべき義務を負担した者となる(185条)。総株式の申込が済んだ後は,会社設立に着手することができる(186条)。
 政府の免許を要するときは,総株式の申込が済んだ段階で免許を受ける(187条以下)。この免許を受けたとき,または免許を要しないときは,申合規則確定のために,第1総会を開く。ここで総申込人の4分の3以上であって,総株金の半額以上を引受ける者の承諾を得たときは,その申合規則は総会の認可を得たものとなる(190条)。第1総会では,そのほか,頭取・取締役を選挙し,また現物出資の価額を議決する(191条)。設立に政府の免許を要するときは,申合規則確定の段階で,正式の免許証書の下付を受ける(192条)。こうして,株主は,1株につき100分の25以上を速かに会社金庫に入金する義務を負う。もっとも株式申込の際に創業費用としてすでに払込んだ金額を引去って入金する。その入金前には登記できず,登記しても無効である(193条)。会社を商業簡明簿に登記することを届出るのに差出すべき書類は,起業目論見書,申合規則,免許証書(政府の免許を得べき会社の場合),総株金の100分の25以上をすでに入金した証左,総株主の名簿および各株主において引受けた株数の書付,頭取の姓名住所,開業の年月日であって,登記したときは登記証書が下付される(194条)。登記後は速かに公告すべく,公告中に記載すべき要件は,会社の目的・社名・設置場所,株式会社であること,会社資本の総額,総株数,1株の金額,頭取の姓名住所,免許を得るべき会社では免許証書の月日,開業の月日である(195条)。支店を設置したときは,その設置地方でも登記・公告を要する(196条)。登記・公告前には開業することはできない。また免許後1年以内に登記・公告をしなければ,免許は無効に帰する(197条)。
 会社登記前に会社の名義または会社の計算をもって契約したすべての義務については,発起人および各株主が全財産をもって連帯の義務を有する(198条)。また発起人は,第1総会前に取結んだ契約および出費であって総会の認可を得ないものについて,全財産をもって責任を負う(199条)。

3 1株の金額は,20円を下りえず,会社資本が10万円以上であるときは100円を下りえない(208条)。株式は,分割または合併できない(210条)。総会における参決権は,1株につき1口を通例とするが,10株以上を有する株主の参決権は,申合規則により制限することができる(244条)。会社は,株主名簿を製して,各株主の姓名住所,各株主所有の株数およびその番号,各株式につきすでに払込んだ金額,各株主入社の年月日,各株主退社の年月日を記載すべきである(204条)。名簿は,社店内において通常の業務取扱時間中は各株主および他人に展閲させる(205条)。会社は,毎年の第1通常総会後20日以内に株主名簿を商事裁判所に呈示すべきである(207条)。官簿登記を添削するためとされる(同条の解説)。
 各株主は,所有の株式に係る金額を,申合規則に従って要求されるに応じて,会社に払込む義務がある(262条)。払込要求は,頭取から払込期限を定めて公告する(263条)。期限に払込をしない株主は,100分の7の延滞利息を払い,かつその延滞によって生じた費用を償う義務がある。頭取が直接督促をしてもなお払込をしないときは,その株式を没収すべきことを告示して,これを会社に帰することができる(264条)。没収が告示されても,その株式の所有者は,会社に対して払込む義務がある(265条)。
 株券には,その番号を付して社印を捺し,社名および株主の姓名を記す(209条)。会社が株金の内金を領収したときは,仮株券を交付し,金額(全額)領収のときになって本株券と交換する(211条)。仮株券,本株券とも,会社を官簿に登記する以前には交付できない(212条)。総株金の払込が済んだ後は,総会の決議をもって,記名株券を無記名に変更することができる(249条)。この決議は,特別決議によるべく,また10日以内に登記し,かつ公告を要する(250条)。登記の時から,株券に株主の姓名を記すべき規則(209条)および株式の譲渡に会社の承認を要する規則(214条)は適用されない(251条)。無記名株券は自由に譲渡売渡しまたは遺物となすことを得べき動産とし,会社は,あらかじめ告知を受けた場合を除き,所有者の所有名義(ベジッツチーテル)を取糺す義務はない(252条)。紛失もしくは損廃した無記名株券は,無効たる旨を公告することができる(253条)。
 会社の解散前には,株金中すでに払込んだ金額およびその払込により得た会社財産持分高の払戻を請求することができない(218条)。すなわち株主は,合名会社の社員におけるような退社は許されない。したがって,会社からの離脱は,株式の譲渡によるほかない。しかし,まず,株金額の4分の1以上を払込まない間に,請取証書,株券または株式利札を譲渡または売渡しても,無効である(213条)。4分の1以上払込んだ上,株式を譲渡または売渡しても,記名株券では,その譲受人または買受人の姓名を株券および株主名簿に記載し,かつ譲渡または売渡について会社の承諾を得るまでは無効である(214条)。名簿および計算整理のため,会社は,年々,公告して15日をこえない日数の間,株式の譲渡売渡を停止することができる(215条)。なお,譲渡人または売渡人は,株金の半額まで払込む義務を,会社がとくに免除しない限り,負い(213条),株金の全額を払込まない間に退社する株主は,その退社の日より起算して1年間,その残額だけをもって,会社が負担するすべての義務について責任を負う(216条)。
 会社の自己株式の取得については,会社は,自己所有のために株式を所得することができず,また質物として受取ることができず,没収した株式,弁償のために会社に交付された株式,受込んだ株式は,4週間以内に相場所において売却して,その代金を会社に入れるべきものと定められている(267条)。
4 株主総会の招集権者は,頭取であるが,総株金の5分の1以上に当る株主から事由を挙げて申立があったときは,総会を招集しなければならない。また取締役も,会社の利害上必要または有益と認めるときは,総会を招集することができる(以上は238条・239条・231条)。招集は,会日より14日前に会議の目的とその要旨とを報知し,かつ申合規則に定めた手練こよってなすべきである(237条)。
 通常総会は,前期の計算書,比較表,業務結果,利足利益配当案を報告し,この諸件に関する決議をするために,毎年1度以上申合規則中に定めた時期に開くもので,ここでは頭取より差出す議案とともに,取締役の報告書を会議に差出すべきである(238条)。それ以外の総会は,臨時総会である(239条)。
 総会の定足数は,申合規則によるが,規則に定めがないときは,総株金の4分の1に当る員数以上の株主(代理人を含む)が出席したときに限り決議することができる(240条)。そして議事は過半数により決する(242条)。しかし,社名の変更,会社の設置所の移転および支店の設置,記名株券の無記名への変更,総資本額または株金額の増減,申合規則の変更,決議による解散については,総株主(総株金)の半額以上に当る株主が出席し,4分の3の多数によって決議することを要する(241条・242条)。定足数に達しないときに,その出席者の多数によってした決議は,爾後3週間以内に規則により第2会を招集し,その出席の過半数による認可がなければ無効である(243条)。仮決議の方法を認めたものである。なお,総会においては議長を選挙すべきである(242条)。
 頭取は,「ヂレクトル」と仮名が振られている。総会は,業務着手の1ヵ月前に,株主中より,頭取3名以上を選挙すべきである。また頭取は,同役中より業務担当者1名または数名を選定することができる。その他会社を代理する者および役員を選定することは,会社の便宜に任される(219条)。頭取が決まるまでは,発起人がその職務を担当する(221条)。頭取に選ばれるべき株主の所有株数は,申合規則に定めるべく,この株式は頭取在任中処分できない(223条)。頭取の任期は,3ヵ年を越えてはならないが,復選を妨げない(224条)。頭取の報酬は,申合規則で確定しておくか,総会の決議で定める(225条)。頭取は,いつでも解任することができ,解任された者は会社に対して償金を請求できない(226条)。頭取の更迭は登記・公告を要し,新任頭取は,その登記・公告前にはその職を執行することができない(229条)。
 頭取は,その職掌義務を尽くすかどうか,また申合規則および会社の決議を確守するかどうかについて,会社に対して責任を負う(227条)。会社の義務についての頭取の責任は,各株主の責任と異ならないが,申合規則において,その在任中に生じた会社の義務につき解任後1年間その全財産をもって連帯責任を負うべきことを定めることができる(228条)。
 会社は,頭取の所業によってとくに直接の権理義務を得る。会社の申合規則で頭取の代理権執行の方法を定める。頭取の権利執行は,申合規則および総会決議の範囲を出てはならない。ただし,とくにその代理権を制限しても,良心なる他人に対しては無効である(222条)。
 取締役は,「アウフジヒツラート」と仮名が振られている。必須機関ではない。申合規則にあらかじめ定められているか,そうでなくても会社において便宜と認めるときは,株主中より3名以上5名の取締役を選挙する。任期は2ヵ年,復選を妨げない(230条)。取締役員には,申合規則または総会決議により,年々報労金を与えることができる(232条)。
 取締役の任務は,頭取および発起人が業務取扱および殊に会社の創起設立上において法律に背戻したところがないか,また業務取扱が申合規則および会社決議に適合するかどうかを監視し,かつすべてその取扱上の錯誤を検考すること,決算帳,比較表および利足利益の配当案を検査して,これを株主総会に報告すること,会社の利害上必要または有益と認めるときは総会を開くことである(231条)。取締役員は,いつでも,会社業務の景況を審査し,会社の商業帳簿およびその他の書類を展閲し,会社会計の実況を検査する権利がある(234条)。取締役員は,担当の事務を分掌することはできるが,頭取または会社に対しては共同一体であって,取締役中協議がととのわないときは,双方の意見および申立を,必要な場所に出すべきである(233条)。取締役員は,頭取の業務取扱およびその結果について責任を負わないが,自己の担任義務を侵して会社または会社の債主に損害を受けさせたときは,これを負担しなければならない(235条)。
 総会は,取締役またはとくに選挙した代理者をもって,頭取または取締役に対して訴訟を起すことができる(279条)。また,会社資本の20分の1以上に当る株主は,代理者を選挙して,頭取または取締役に係る訴訟につき原告または被告の職分を代理させることができる。もっともそのために,各株主が自己の名義で弁護のためまたは間告人(参加人)として出廷する権利は妨げられない(280条)。

5 会社は,株主に株金の金額または幾分を払戻すことができず,株主も,これを会社から引出すことができない。もし引出したときは,その半額を罰金として会社に払わなければならない。払戻した,または引出した金額は,会社または会社の債主から,直接に償還させることができる(266条)。
 利足および利益は,損失によって会社資本が減少しないときでなければ,これを計算しまたは配当することができない。資本の減額があるときは,利益をもって第1にその減額を補償すべきである(269条)。また,会社資本の4分の1に当る準備金を蓄積するために,毎年の利益額の20分の1以上を引去るべく,その後でなければ利足または利益の配当をすることができない(270条)。以上の規則に違反して払出した利足または利益の配当は,その払出後3年間はいつでも償還させることができる(271条)。利足および利益の配当は,各株式について払込んだ高に応じて平等に各株主中に分つ(272条)。
 会社は,半年ごとに決算して財産目録および比較表を公告する義務がある(268条)。また本店・支店に株主名簿,起業目論見書,申合規則,総会の決議書,毎半年の決算書および比較表,書入債主の名簿などを備え置いて,通常の業務取扱時間中,望みの者に展閲させるべく(273条),半年ごとに1度30日以内,社店の戸外に掲示してその展閲を停止することができる(274条)。総株金の5分の1以上に当る株主の至当な申立により,会社設置の地方の裁判所は,官吏を派遣して会社の業務および財産の実況を検査させることがある(275条以下)。検査結果の写しは,会社に下付され,また株主その他の者にも下付されうる(277条)。

6 会社は,申合規則の定めまたは総会決議により,総資本額または株金額を増減することができる。ただし,判事の許可を得て登記・公告した後でなければ増減できない(254条)。資本の増加は,株金の増加によると,新株券および負債証券(社債券)の発行によるとを問わない(同条)。総資本は,その4分の1以内に減少することができない(255条)。総資本または株金額を減少しようとするときは,その趣旨を各債主に通知してその承諾を求める(256条)。そして判事の許可を得るため願書を差出し,これに各債主の名簿を添え,債主が承諾したかどうかを名簿中に書加える。裁判所では,異議ある者は60日以内に申出るよう公告する(257条)。承諾しない債主の異議は,その要求高を償却するか抵当を入れるのでなければ消除できない(258条)。各債主の異議を消除した後,裁判所は減額を許可する。社名には,「減額」なる語を付加しなければならない(259条)。
 会社の解散事由は,申合規則に定めた場合の到来,総会の解散決議,株主の員数の7名以下への減少,会社資本の4分の1未満への減少,倒産処分,判事の解散命令である(281条)。いずれの場合も必ず総会の決議をとって,10日以内に各株主に報知し,登記・公告すべく,この決議を怠るときは,判事の命令をもって代えうる(283条)。株主が7名未満になったのに会社が6ヵ月以上営業を続けるときは,株主は,社員減少後に取結んだ会社のすべての義務につき合名社員と同じ責任を負う(284条)。解散後頭取が総会招集,報知,登記を怠ったときは,これにより会社または他人に生じた損害につき自己の全財産をもって責任を負う(285条)。解散のときはただちに営業を停止すべく,頭取が解散後なお営業を続けるときは,自己の全財産をもって責任を負う(286条)。解散を登記した後は,決算のためにするのでない財産処分,株式譲渡売渡,株主の更迭は,すべて無効である(293条)。
 清算は,決算(リクイダチヲン)と呼ばれている。解散決議の総会で,1名または数名の決算人を選挙する。選挙しないときや,倒産,解散命令による解散のときは,裁判所が任命または認可する(288条)。決算人の姓名は,速かに裁判所に申報し,登記・公告する(288条)。この登記をしたときは,頭取の代理権は決算人に移る(289条)。裁判所は,解散および決算の実況を監督する権利がある(291条)。決算人は,清算,残余財産の分配により,清算を結了するが,会社現在の財産をもって会社の各債主に完納することができなくなったときは,倒産処分の手続をする(306条)。


1)ドイツ旧商法では,いずれの会社についても,法人であることを認める明文の規定はなかったが,合名会社・合資会社は法人でなく,株式会社は法人であると考えられていたようである(v.Hahn,Commentar zum ADHGB,Bd.1,3.Aufl.,1877,Art.213§.1)。現在ドイツでは,株式会社が法人格を有することは明文をもって規定されているが,合名会社・合資会社は法人とは認められない。フランスでは,会社が法人格を有することは,理論上認められてきたし,1966年会社法5条は明文で規定する。わが国の旧商法は,商事会社を法人と定めなかったが,法人と解する見解が強くなっていた(梅謙次郎『改正商法講義』15ページ,長谷川喬『商法正義』1巻,36ページ以下)。明治32年商法に至って,「会社ハ之ヲ法人トス」という規定を設けた(当時の44条,現在の54条)。
2)株式合資会社は,明治32年商法において初めて,ドイツでもフランスでも認められており,その発達を奨励し実際に便利を与えるという理由で(商法修正案参考書第2編会社の理由)採用されたが,利用が少なく,昭和25年商法改正の際に廃止された。
3)旧商法84条も同趣旨であるが,これに対しては疑問がもたれ(梅・前掲書297ページ以下),明治32年商法にはもはやこのような規定はない。

Ⅳ 旧商法

1 総論
1 旧商法は,ロ氏草案を基礎とし,これに修正を加えて,明治23年(1890)に公布された。「第1編 商ノ通則」の「第6章 商事会社及ヒ共算商業組合」は,「商事会社総則」(66条―73条),「第1節 合名会社」(74条―135条),「第2節 合資会社」(136条―153条),「第3節 株式会社」(154条―255条),「第4節 罰則」(256条―264条),「第5節 共算商業組合」(265条―273条)から成る。ロ氏草案と対比すると,商社が商事会社に,差金会社が合資会社に改められ,罰則と共算商事組合(当座組合,共分組合,匿名組合)の規定が独立の節となっている。
 以下,ロ氏草案との異同を中心にして,旧商法を考察する。なお,旧商法は,明治26年(1893)に施行の際,若干の修正があるが,これは後にまとめて述べる。

2 「商事会社ハ共同シテ商業ヲ営ム為メニノミ之ヲ設立スルコトヲ得」(66条)。株式会社は,商業を営むことを目的としなくても,商事会社とみなされる(155条)。法律,命令により官庁の許可を受けるべき営業をなす会社は,その許可を得なければ設立できない(68条)。とくに株式会社は,会社設立の免許が必要であり(156条),この点ロ氏草案より厳格になっている。社名は商号に,設置の場所は営業所に改められている(70条)。旧商法では,一般に,商号,商業登記簿の名称が用いられ,現在の支配人は,代務人と呼ばれる。会社の無効,解散命令(67条)は,草案に類する。

3 会社が特立の財産を所有し,独立して権利を得,義務を負い,訴訟につき原告・被告となるうること(73条)は,草案とほぼ同じであり,会社を法人と認める明文の規定はない。ただ,「会社ノ設立ハ適当ナル登記及ヒ公告ヲ受クルニ非サレハ第三者ニ対シテ会社タル効ナシ」(69条)という規定は,草案にないものである。

2 合名会社
1 合名会社に関する規定は,「第1款 会社ノ設立」(74条―82条),「第2款 会社契約ノ変更」(83条・84条),「第3款 社員間ノ権利義務」(85条―107条),「第4款 第三者ニ対スル社員ノ権利義務」(108条―119条),「第5款 社員ノ退社」(120
条―125条),「第6款 会社ノ解散」(126条―135条)で,その組立は草案と変らない。
 合名会社は,「2人以上7人以下共通ノ計算ヲ以テ商業ヲ営ム為メ金銭又ハ有価物又ハ労力ヲ出資ト為シテ共有資本ヲ組成シ責任其出資ニ止マラサルモノ」である(74条)。草案と内容的には同様であるが,出資という語が用いられるようになっている。商号には,総社員またはその1人もしくは数人の氏を用い,これに会社なる文字を付すべく,現在する他人の営業を引受けるときは,その旧商号を続用できないこと(75条)も,草案と同趣旨である。
2 会社は,書面契約によってのみ設立することができ(77条),設立後14日以内に本店および支店の地で登記を受けるべきである(78条)。登記事項は,合名会社であること,会社の目的・商号・営業所,各社員の氏名・住所,設立の年月日,存立時期を定めたときはその時期,業務担当社員をとくに定めたときはその氏名である(79条)。登記事項の変更を7日内に登記すべきこと(80条),登記前に開業できないこと(81条),登記の日より6ヵ月内に開業しないときは,登記・公告が無効であること(82条),草案と同様である。

3 会社契約は,総社員の承諾がなければ変更できない(83条)。会社契約の規定で会社が施行しなかったものは,社員または第三者に効用をもたせることができない(84条)という規定も,草案と同様である。しかし出資の増減,入社などに関する規定は,社員間の権利義務の款に移された。

4 社員間の権利義務は,商法および会社契約によって定まる(85条)。会社の目的に反しないが,これと異なる業務・事項については,業務担当の任がある総社員の承諾を要する(86条)。会社契約の規定の施行に関する事項は,業務担当の任がある社員の多数で決する(87条)。会社の業務を行い,その利益を保衛するについては,会社契約に別段の定めがない限り,各社員が同等の権利を有し,義務を負い(88条),社員の議決権について出資の額に応じて等差を立てることはできず(89条),業務担当の任がない社員に監視権がある(90条)ことも,草案と同旨である。各社員の会社に対する注意義務(92条),社員の競業避止義務およびその違反の効果(104条)も,草案とやや表現は異なるが,内容は同じである。
 社員が差入れた金銭・有価物の出資が会社の所有に帰すること(93条),社員が負担した出資を差入れないときの効果(95条),社員は,契約上の額以外に出資を増したり,損失によって減じた出資を補充する義務がないこと(96条),出資・持分を減ずるには総社員の承諾を要すること(97条),損益共分の割合は,契約に他の準率の定めがなければ,出資の価額に準ずること,および労務出資の評価(105条)など,規定の個所が草案と異なるものはあるが,内容は同じである。ただ,特定の社員に特別の利潤を配当する約定を無効とする草案の定めに相当する明文の規定はない。社員は,総社員の承諾を得なければ,第三者を入社させ,または第三者と交替できないこと,社員の相続人または承継人は,契約で反対を明示しないときは,その社員の地位に代りうることも,草案と同じであるが,相続人などが社員の地位に代った場合,総社員の承諾を得なければ業務を担当する権利がないというただし書きが追加されている(98条)。社員がその持分に他人を加入させるときは,その関係は共算商業組合の規定による(100条)とするのは,草案が副社員という場合に当る。

5 代理権に関しては,会社は,業務担当の任がある社員が,明示して会社のためになし,または事実会社のためになしたすべての行為によって,直接に権利を得,義務を負う(108条),会社の権利は,業務担当の任がある社員が,裁判上と裁判外とを問わず,これを主張しまたは有効に処分することができる(109条),第三者に対する会社の義務は,第三者より業務担当の任がある各社員に対してその履行を求めることができる(110条),業務担当の任がある社員の代理権に加えた制限は,第三者に対して効力がない(111条)というように,草案に比して,すっきりした規定になっている。社員間で,社員が会社契約または商法の規定によって会社のためになしたすべての行為・取引は,各社員において互にこれを承認する義務がある(107条)という規定は,草案を踏襲している。
 会社の義務については,まず会社財産が負担し,次に各社員がその全財産をもって不分で負担する(112条)という規定は,社員の不分(連帯)を明示したほかは草案と同様である。社員でなくて商号にその氏を表することを承諾し,もしくはこれを表するに任せ,または会社の業務の施行にあずかり,または事実社員たるの権利義務を有する者は,社員と同じく連帯無限の責任を負う(113条)というのも,内容的に草案と異ならない。しかし,新たに入社する社員については,契約上他の定めがないときは,入社前に生じた会社の義務についても責任を負う(115条)と改められている。
 債権者の地位に関しては,社員の債権者がその債権のために会社財産に属する物を請求できないこと(116条),社員の債権者は,社員みずからが要求できる利息または配当金のみを会社に対して要求でき,社員の持分については社員の退社または会社解散の場合でなければ要求できないこと(117条),会社に対する債権債務と社員に対する債権債務との相殺は,会社財産の分割前には許されないこと(118条),草案とほぼ同様である。社員の持分を減じたため,会社財産から得べき弁償を減損または支障された会社債権者が,減少に対して異議を述べうること(119条)も,草案と同じであるが,異議期間は減少の時から2ヵ年内と改められ,また草案にあるような異議の効果に関する規定はない。

6 社員の退社は,会社契約が有期のときは総社員の承諾を要し,無期または終身のときはその承諾を要せず任意であり,その退社は,急速に退社すべき重要な事由がある場合を除き,6ヵ月前に予告して事業年度末に限る(120条)。その他の退社原因は,除名,死亡(亡社員の地位に代るべき相続人などがないとき),破産,能力喪失(特約がないとき)である(121条)。退社は,7日内に登記を要する(122条)。退社員には,退社の時の割合で持分が払渡される(123条)。退社員は,退社前に係る会社の義務について全財産をもって責任を負うが,その期間は,草案における退社後1年から2年に改められている(125条)。
 会社の解散事由は,会社存立時期の満了,会社契約に定めた解散事由の起発,総社員の承諾(草案における4分の3と異なる),会社の破産,裁判所の命令である(126条)。会社が目的を達することができない,または会社の地位を維持することができないという理由で,1人または数人の社員から解散を申立てるときは,裁判所の命令で解散させることができ,会社の地位を維持できない場合に,会社の解散に換えてある社員を除名すべきことを他の社員より相当の理由をもって申立てるときは,裁判所の命令で除名できる(127条)という規定は,草案の定めをやや修正している。会社契約による解散の場合には,会社の保続を認める(128条)のも,草案と類似している。会社が解散したときは,破産の場合を除き,総社員の多数決をもって清算人を任じ,解散と清算人を7日内に登記する(129条)。以下清算の手続は,草案と大差ない。会社の義務についての社員の無限責任が,その義務に5ヵ年未満の時効の規定がなければ,解散後5ヵ年の時効にかかること(135条)も,草案と同様である。
3 合資会社
1 合資会社は,ロ氏草案の差金会社に当り,有限責任社員だけからでも成りうる。すなわち,社員の1人または数人について契約上別段の定めがないときは,社員の責任が金銭または有価物をもってする出資のみに限るものである(136条)。社員の数に制限はない(同条)。商号には,社員の氏を用いることができないが,無限責任社員の氏は用いてよく,商号に社員の氏を用いたときは,その社員は無限責任を負う。いずれの場合も合資会社なる文字を付すべきである(139条)。減資の場合の付加語は,要求されていない。合資会社は,とくに定めた規定のほかは,すべて合名会社の規定に従う(137条)。
 設立については,登記事項が,合資会社であること,会社資本の総額,各社員の出資額,無限責任社員があるときはその氏名,業務担当社員または取締役があるときはその氏名およびその責任の有限無限(138条)と,整備されている。

2 各社員は,契約上他の定めがないときは,同等に会社を代理する権利義務を有する(141条)。したがって契約によりとくに業務担当社員を定めることもできる。また,社員7人を超える会社では,会社契約で,設立後7人を超えるときは会社の決議で,1人または数人の取締役を任ずる(142条)。草案の頭取が取締役に改められ,決議による選任が総社員の4分の3以上の多数決によることは草案と同じであるが,解任も同じ多数決による旨の規定(同条)が追加されている。業務担当社員または取締役は,裁判上と裁判外とを問わず,すべて会社の事務につき会社を代理する専権を有すること,数人ある場合に単独代理か共同代理かは会社契約または会社の決議で決めること(143条),その代理権に加えた制限は,善意でこれと取引した第三者に対して効力がないこと(144条)は,草案と同じである。
 業務担当社員または取締役を選定した場合には,株主総会に類似した会議が必要であることも,草案と同じである。しかし総会に関する定めは,かなり整備されている。業務担当社員または取締役は,毎年少なくとも1回通常総会を招集し,必要と認めるときまたは総社員の4分の1以上の申立があるときは臨時総会を招集すべきである(148条)。総会を招集するには,会日より少なくとも7日前に会議の目的を通知し,提出すべき書類を送付することを要する(149条)。通常総会は,事業年度が終った後ただちに開き,その年度の貸借対照表および事業ならびにその成果の報告書を社員に提出して検査と認定を受けるべく,その認定は出席社員の多数決による(150条)。臨時総会において議すべき事項は,総社員の過半数で決する。しかし合名会社において総社員の承諾を要すべき事項については,総社員の4分の3以上の多数をもって決すべく,この場合には不同意の社員はただちに退社する権利がある(151条)。このような決議に要する定数の社員が出席しないときは,その総会で仮りに決議し,その決議を総社員に通知して再び総会を招集し,第2の総会の出席社員の多数をもって第1の総会の決議を認可するという方法が認められる(152条)。

3 無限責任社員,取締役を除き,社員は,会社の競業をなしうる(140条)。草案とやや異なる。草案のような各社員の監視権は,とくに定められていない。有限責任社員は,業務担当社員または取締役の認可を得てその持分を他人に譲渡できる(145条)というのも,草案と異なる。会社の義務についての社員の責任に関して,詳しい規定はない。しかし,会社契約または選任決議で,業務担当社員または取締役がその業務執行中に生じた会社の義務につき無限責任を負うべき旨を,あらかじめ定めることができ(146条),この責任は退任後1ヵ年で消滅する(147条)ことは,草案と同じである。また,利息または配当金は,会社資本の額が損失によって減じた間はこれを社員に払渡すことができないという規定(153条)も,草案と同様である。

4 株式会社
1 株式会社に関する規定は,「第1款 総則」(154条―156条),「第2款 会社ノ発起及ヒ設立」(157条―172条),「第3款 会社ノ商号及ヒ株主名簿」(173条・174条),「第4款 株式」(175条―184条),「第5款 取締役及ヒ監査役」(185条―197条),「第6款 株主総会」(198条―204条),「第7款 定款ノ変更」(205条―211条),「第8款 株金ノ払込」(212条―215条),「第9款 会社ノ義務」(216条―223条),「第10款 会社ノ検査」(224条―229条),「第11款 取締役及ヒ監査役ニ対スル訴訟」(228条・229条),「第12款 会社ノ解散」(230条―239条),「第13款 会社ノ清算」(240条―255条)から成る。草案よりやや整理されている。用語は,創起が発起,社名が商号,頭取が取締役,取締役が監査役,申合規則が定款,決算が清算というように,おおむね現在の用語に改められている。
 株式会社は,会社の資本を株式に分ち,その義務に対して会社財産のみ責任を負うものである(154条)。株式会社は,7人以上をもってし,かつ政府の免許を得なければ設立できない(156条)。商号には,株主の氏を用いることができず,また株
式会社なる文字を付すべきである(173条)。

2 株式会社は,4人以上でなければ発起できない(157条)。発起人は,目論見書および仮定款を作り,各自これに署名捺印する(同条)。裁判所や公証人の奥印は要求されない。目論見書に記載すべき事項は,株式会社であること,会社の目的,会社の商号および営業所,資本の総額,株式の総数,1株の金額,資本使用の概算,発起人の氏名・住所,発起人各自が引受ける株数,存立時期を定めたときはその時期である(158条)。定款の記載事項は,定められていない。発起人は,会社を設立すべき地の地方長官を経由して,目論見書および仮定款を主務省に差出し,発起の認可を請うことを要する(159条)。この認可を得たときは,発起人は,目論見書を公告して株主を募集することができる(160条)。株式の申込は,申込人が株式申込簿に引受株式を記入し署名捺印してなされ,陳述書の送付による申込,代人による申込も可能である(161条)。株式め申込によって,申込人は,会社が設立すれば定款に従い各株式についての払込義務を負う(162条)。
 総株式の申込があった後,発起人は,創業総会を開くべく,この総会では,少なくとも総申込人の半数であって総株金の半額以上に当る申込人の承諾を経て定款を確定する(163条)。また創業総会では,創業のために発起人がした契約および出費の認否を議定し,現物出資をする者があればその価格を議定する。これらの議定は,少なくとも総申込人の半数であって総株金の半額以上に当る申込人が出席し,その議決権の過半数による(164条)。さらに創業総会において,取締役および監査役を選定する(165条)。創業総会が終った後,発起人は,地方長官を経由して主務省に会社設立の免許を請うべく,その申請書には,目論見書,定款,株式申込簿,発起の認可証を添付する(166条)。会社設立の免許を得たときは,発起人は,その事務を取締役に引渡すべく,取締役は,速かに株主をして各株式につき少なくとも4分の1の金額を会社に払込ませる(167条)。会社は,この払込の後14日内に目論見書,定款,株式申込簿,設立免許書を添えて登記を受けるべく,登記事項は,株式会社であること,会社の目的・商号・営業所,資本の総額,株式の総数,1株の金額,各株式につき払込んだ金額,取締役の氏名・住所,存立時期を定めたときはその時期,設立免許の年月日,開業の年月日である(168条)。支店を設けたときは,その所在地でも登記を受ける(169条)。設立免許を得た後遅くとも1ヵ年内に登記を受けなければ,免許は効力を失う。登記前には開業できないこと,登記の日から6ヵ月内に開業しなければ登記・公告が無効であることは,合名会社の場合と同様である(170条)。
 登記前には,創業総会の承認を経た義務および出資について,発起人,取締役,株主が連帯責任を負い(171条),創業総会の承認を経ない義務および出資については,発起人が連帯無限の責任を負う(172条)という規定は,草案の定めを明確にしている。

3 各株式の金額は,会社資本を一定平等に分ったもので,20円を下りえず,また会社資本が10万円以上であるときは,50円を下りえない(175条)。株式は,分割または併合できない(177条)。株主の議決権は,1株ごとに1箇を通例とするが,11株以上を有する株主の議決権は,定款で制限することができる(204条)。会社は,株主名簿を備え,各株主の氏名・住所,各株主所有の株式の数および株券の番号,各株式につき払込んだ金額,各株式の取得・譲渡の年月日を記載する(174条)。これを毎年裁判所に提出するようなことは,要求されていない。
 株金の払込については,草案と同趣旨であるが,払込の催告は払込の日より少なくとも14日前に株主に通知すべきこと(212条),払込を怠った株主がさらに14日の期間で催告を受けても払込をしないときは,会社はその株主に対して株券の所有権を失ったと宣言することができ,その株券は会社の所有となること(214条),その株券を公売してもその代金が催告された払込金額に満たないときは,従前の所有者が不足金を支払うべきこと(215条)などの規定によって整備されている。
 株式については,1株ごとに株券1通を作り,これにその金額,発行の年月日,番号,商号,社印,取締役の氏名・印,株主の氏名を載せる(176条)。株金全額払込以前には,会社は仮株券を発行し,全額完納の後に至ってはじめて本株券を発行することができる(178条)。仮株券および本株券は,登記前には発行できない(179条)。草案と異なり,無記名株券の発行は認めていない。
 払込んだ株金額および会社財産中の持分は,解散前には取戻を求めえないという規定(184条)は,草案と同じである。株式の譲渡については,まず,株金額の少なくとも4分の1の払込前にした株式の譲渡は無効である(180条)。そして,株式の譲渡は,取得者の氏名を株券および株主名簿に記載しなければ,会社に対してその効がない(181条)。会社の承諾は,要件となっていない。会社は,株主名簿および計算の閉鎖のため,公告して事業年度ごとに1ヵ月をこえない期間,株券の譲渡を停止することができる(183条)。なお,株金の半額払込前の株式の譲渡人は,会社に対してその株金未納額の担保義務を負う(182条)。
 自己株式の取得については,会社は,自己の株券を取得しまたは質に取ることができず,所有権を失ったと宣言された株券,債務の弁償のためその他の事由によって会社に交付されもしくは移属した株券は,1ヵ月内に公に売り,その代金を会社に収めるものとされる(217条)。

4 株主総会の招集権者は,取締役であるが,監査役も,会社のために必要または有益と認めるときは,総会を招集できる。また総株金の少なくとも5分の1に当る株主より会議の目的を示して申立てるときは,総会を招集しなければならない(以上は198条・192条・201条)。招集は,会日より少なくとも14日前にその会議の目的および事項を示し,かつ定款に定めた方法によってする(198条)。以上は草案と同じである。
 通常総会は,毎年少なくとも1回,定款に定めた時に開き,前営業年度の計算書,財産目録,貸借対照表,事業報告書,利息または配当金の分配案を株主に示して議決する。取締役の提出する書類についての監査役の報告書は,その書類とともに提出する(200条)。臨時総会は,臨時の事項を議する(201条)。総会は,商法に別段の規定がある場合のほかは,定款の定めに従ってのみ決議をすることができ,定款に定めがないときは,総株金の少なくとも4分の1に当る株主が出席し,その議決権の過半数によって決議する(202条)。これは草案と同じである。定款の変更および任意の解散についての決議は,少なくとも総株主の半数で総株金の半額以上に当る株主が出席し,その議決権の過半数による(203条)。定足数に達しないときに,合資会社の総会におけると同様の仮決議の方法が認められる(同条)。なお,総会の議長についての規定はない。
 総会は,株主中から3人より少なくない取締役を,3ヵ年の時期をもって選定する。再選を妨げない。取締役は,同役中より主として業務を取扱うべき専務取締役を置くことができるが,その責任は他の取締役と同一である(185条)。取締役に選ばれるために株主が所有すべき株数は,定款で定め,取締役の在任中はその株券に融通を禁ずる印を捺し,会社に預り置く(187条)。取締役の更迭は,登記を要する(190条)。取締役が,裁判上と裁判外とを問わずすべて会社の事務につき会社を代理する専権を有すること,単独代理か共同代理かは定款または総会決議で定めること,その代理権に加えた制限は善意の第三者に対して効力がないことは,合資会社の業務担当社員または取締役についてと同じである(186条)。
 取締役は,その職分上の責務を尽くすこと,および定款・総会決議を遵守することについて,会社に対して自己にその責任を負う(188条)。また,会社の義務についての取締役の責任は,各株主と異ならないが,定款または総会決議をもって,取締役の在任中に生じた義務について取締役が連帯無限の責任を負うべき旨をあらかじめ定めることができ,その責任は退任後1ヵ年で消滅する(189条)。
 総会は,株主中から3人より少なくない監査役を,3ヵ年の時期をもって選定する。再選を妨げない(191条)。草案と異なり,必須機関である。監査役の職分は,取締役の業務施行が法律,命令,定款,総会決議に適合するかどうかを監視し,かつすべてその業務施行上の過誤および不整を検出すること,総会提出書類を検査して総会に報告すること,会社のために必要または有益と認めるときは総会を招集することである(192条)。監査役には,広汎な検査権が認められている。草案のように監査役が共同一体という定めはなく,監査役中で意見が分れたときは,その意見を総会に提出するという規定(194条)があるだけである。監査役は,前掲の責務を欠いたことによって,会社またはその債権者に加えた損害につき責任を負う(195条)。
 取締役または監査役が報酬を受けるべきときは,定款または総会決議で定める(196条)。取締役または監査役は,いつでも総会の決議をもって解任することができ,解任された者は,会社に対して解任後の報酬や償金を請求できない(196条)。取締役・監査役に対する訴訟について,総会は,監査役またはとくに選定した代人をもって当らせることができる(228条)。また,会社資本の少なくとも20分の1に当る株主は,とくに選定した代人をもって取締役・監査役に対して訴訟をすることができ,この場合も各株主は,自己の名を用いまたは参加人となって,裁判所においてその権利を保衛する権利がある(229条)。以上の点も,内容的に草案と同じである。

5 会社は,株金の全部または一部を株主に払戻すことができず,もし払戻したときは,会社または債権者が直接にその金額の取戻を求めることができる(216条)。草案のような罰金の規定はない。
 利息または配当金は,損失によって減じた資本を?補し,規定の準備金を控取した後でなければ分配できない。資本の4分の1に達するまでは,毎年の利益の少なくとも20分の1を準備金として積置くことを要する(219条)。以上の成規によらないで払出した利息または配当金は,会社または債権者が直接に取戻を求めることができる(220条)。草案のような取戻期間の限定はない。利息または配当金の分配は,各株につき払込んだ金額に応じて,総株主の間に平等にする(221条)。
 会社は,毎年少なくとも1回計算を閉鎖し,計算書,財産目録,貸借対照表,事業報告書,利息または配当金の分配案を作り,監査役の検査を受け,総会の認定を得た後,その財産目録および貸借対照表を公告する。その公告には,取締役および監査役の氏名を載せる(218条)。会社は,その本店・支店に株主名簿,目論見書,定款,設立免許書,総会の決議書,毎事業年度の計算書,財産目録,貸借対照表,事業報告書,利息または配当金の分配案,抵当もしくは不動産質の債権者の名簿を備置き,通常の取引時間中なにびとにもその求めに応じ展閲を許す義務がある(222条)。この展閲は,諸帳簿検正のため事業年度ごとに1回1ヵ月を超えない期間停止することができる(223条)。草案のような掲示は要求されない。総株金の少なくとも5分の1に当る株主の申立によって,会社営業所の裁判所は,官吏に検査を命ずることができ(225条),その調書は裁判所に差出され,調書の謄本は,裁判所から会社に付与され,また株主その他の者にも求めに応じて付与される(226条)。主務者は,いつでも地方長官その他の官吏に検査を命じうる(227条)。

6 会社は,定款に定めがあるときまたは総会の決議によって,定款を変更することができるが,法律の規定または政府から免許に付した条件に違背することはできない(205条)。定款中登記した事項を変更したときは,ただちに変更登記を受けるべく,登記前には変更の効力を生じない(210条)。会社資本の増加は,株券の金額を増し,または新株券もしくは債券を発行してなす。この債券は,記名のもので,その金額は株金額に準ずる(206条)。会社資本の減少は,株券の金額または株数を減じてなすことができるが,資本はその金額の4分の1未満に減ずることはできない(同条)。資本を減じようとするときは,会社は,その旨をすべての債権者に通知し,異議ある者は30日内に申出るべき旨を催告することを要する(207条)。この期間に異議の申出がなければ,異議なきものとみなされ,異議の申出があったときは,会社は,その債務を弁償し,または担保を供して異議を取除いた後でなければ,資本を減ずることはできない(208条)。資本の減少した部分の払戻を受けた株主は,過誤なき不知のためその減少につき異議を申出ない債権者に対して,登記の日から2ヵ年間その受けた払戻の額に至るまで自己に責任を負う(209条)。草案のように,資本の増減につき判事の許可を得ること,減資の場合に裁判所が異議を催告することや社名に減額なる語を付加することは,採用されていない。
 会社の解散事由は,定款に定めた場合,株主の任意の解散,株主が7人未満に減じたこと,資本が4分の1未満に減じたこと,会社の破産,裁判所の命令である(230条)。解散の場合には,すでに始めた取引を完結し,または現に存在する会社義務を履行するほかは,その業務を止めるべく,取締役がそれにもかかわらず営業を続行するときは,このためにその全財産をもって自己に責任を負う(231条)。解散の場合には,取締役は,総会を招集し,裁判所の命令による場合のほかは解散を決議し,清算人を選定する(232条)。破産の場合を除き,決議後7日内に解散や清算人の登記を受け,裁判所に届出,いずれの場合にも各株主に通知し,主務官庁に届出る(234条)。取締役が総会の招集や登記の届出をしなかったときは,このために会社または第三者に生ぜしめた損害についてその全財産をもって自己に責任を負う(238条)。登記を受けるとともに,取締役の代理権は清算人に移り(236条),登記後にした株式の譲渡や清算の目的のためにしない財産の処分は,すべて無効である(237条)。清算人の職分は,合名会社の場合と同じである(241条)。清算の手続は,草案とおおむね同じである。

5 明治26年の改正
1 明治26年(1893)旧商法のうち会社,手形,破産の部分だけが施行されるに当り,旧商法に所要の改正が加えられた。その主な点だけを述べる。全体に関係するところとしては,会社の「商号」が再び「社名」と改められた。また「開業」は「事業ニ着手」となった。

2 合名会社に関しては,社員が「2人以上7人以下」となっていたが,「7人以下」が削られた(74条)。社員数の上限はなくなったわけである。また,社員の死亡の場合,会社契約に反対を明示しなければ,相続人または承継人が社員の地位に代ることができたが(98条2項),改正により,死亡は原則的に退社事由となり,会社契約または総社員の承諾により相続人その他の承継人が死亡者の地位に代るべきときには社員の地位が承継されるものとなった(121条改正)。死亡社員の地位の承継者は,総社員の承諾がなければ業務担当権がないという規定(98条2項但書)は,削られた。

3 合資会社に関する部分は,かなり大きく改正された。合資会社の社員の数は制限しないという規定(136条2項)が削られたのは,合名会社についても上限がなくなったからである。従来,無限責任社員,業務担当社員,社員7人を超える会社における取締役があってやや複雑であったが,社員数にかかわらず,業務担当社員を必須機関とするとともに,取締役を廃止した。すなわち,業務担当社員が,総社員の4分の3以上の多数決により選任(および解任)されることとし(141条改正),会社契約により一定の無限責任社員のみをもって業務担当社員に充てることとすることができる(142条改正)。各条文中,取締役はすべて削られた。また,業務担当社員は,その業務施行中に生じた会社の義務について連帯無限の責任を負い(146条改正),従来のようにこの責任を会社契約や会社決議により定めうるだけではなくなった。この責任の期間も,退任後1ヵ年から2ヵ年に改めらた(147条)。

4 株式会社に関する主な改正点は,次のとおりである。株式1株ごとに株券1通を作ることになっているが,定款により数株を合して1通の株券を作ることができる旨追加された(176条)。株金額の少なくとも4分の1の払込前の株式の譲渡が無効であったのが,登記前の株式の譲渡が無効と改められた(180条改正)。株金半額払込前の株式の譲渡人の担保義務について,期間の限定がなかったが,譲渡後2ヵ年間となった(182条改正)。取締役の連帯無限責任の期間が,退任後1ヵ年から2ヵ年に改められた(189条但書)。監査役は,「3人ヨリ少ナカラサル」が「2人以上」となった(191条改正)。監査役の職分中,すべて取締役の業務施行上の過誤および不整を検出することが削られた(192条改正)。会社資本の増加の方法として債券の発行が掲げられていたのが削られ,別に,会社は債券を発行することができ,債券は記名のもので,その金額については株金額の規定に従うことが定められた(206条改正)。払込遅滞の株式につき,会社はその株主に対して株券の所有権を失ったと宣言し,その株券は会社の所有となる旨の規定は,会社はその株主に通知してその株券を公売することができると改められた(214条改正)。自己株式の取得については,右にともなう改正とともに,会社が処分すべき期間が1ヵ月内から3ヵ月内になった(217条改正)。会社の本店・支店に備置く諸書類の展閲を許すべき者は,なにびとでもとなっていたが,株主および会社債権者に限定された。

5 旧商法の施行条例によって,会社でなくて商業を営む者は,その商号に会社の文字を用いることができず,従来これを用いる者は商法実施の日より3ヵ月内に改めるべきこと(2条),商法実施前よりすでに設立した各会社は,商法実施の日より6ヵ月内に登記を受けるべきこと(5条),この期間内に登記を受けない既設会社は,その期限経過の時より第三者に対して会社たる効力を失うこと(6条),既設会社は,従来の社名を続用できるが,社名にはその会社の種類に従い合名会社,合資会社または株式会社の文字を付すべきこと(8条)などが定められる。また既設株式会社については,商法実施の日より6ヵ月内に主務者による定款の認可を受けるべきこと,株金額やすでに発行した株券は,旧商法の規定に反していても改める必要がないこと(11条・14条)などの規定がある。

Ⅴ 現行商法へ

1 明治32年(1899),商法修正の件として,新たな条文をもって現行商法が公布され,施行された。たしかに旧商法に比してきわめて整備された法典である。しかし旧商法を1つの基礎として,その検討のうえにできあがったことも事実である。その意味で,現行商法が旧商法とまったくつながりをもたないものとみることはできないであろう。
 現行商法施行の前年に現行民法が施行され,これと重複する部分やこれに委ねうる部分については,商法において規定する必要がなくなった。その他の点でも,民法との調和がはかられた。

2 民法が組合という表現を用いたので,従来商事会社といわれたものが,単に会社と称せられることになった。会社とは,商行為をなすを業とする目的をもって設立した社団をいうものとされ,商行為以外の営利を目的とする社団で商法会社編により設立したものは,会社とみなされる1)(42条,現52条)。
 会社は法人である旨の規定が設けられた(44条,現54条)。もっとも旧商法の下でも,会社が特立の財産を所有し,独立して権利を得,義務を負い,訴訟につき原告または被告となりうるという規定があった(旧商法73条)ことや,諸法文に「会社及ヒ其他ノ法人」という表現があった(たとえば旧商法17条)ことから,会社は法人であるという解釈が広く行われていたようである2)。会社の設立は,本店の所在地において登記をしなければ第三者に対抗できず(45条)。この登記をしなければ開業の準備に着手できない(46条)というのは,旧商法に類似している。会社が設立登記によって成立する(現57条)となったのは,昭和13年の改正においてである。
 会社の種類は,合名会社,合資会社,株式会社,株式合資会社である(43条,昭和13年改正53条)。旧商法に比し,株式合資会社が追加された。しかしこれはその後あまり利用されず,昭和25年の商法改正の際に廃止された(現53条参照)。旧商法と異なり,各会社の定義は掲げられていない。再び会社の商号という語が用いられ,会社の商号中にはその種類に従い,合名会社,合資会社,株式会社,株式合資会社なる文字を用いることを要する(17条)以外,商号の選定について旧商法のような制限はない。
 合資会社は,有限責任社員と無限責任社員とをもって組織するものとなり(104条,現146条),旧商法のような有限責任社員だけでも組織できる合資会社は認められなくなった。昭和13年に至り,有限会社法が制定されて,社員の有限責任を基礎としつつ,持分の自由な譲渡を認めない,比較的規模の小さい企業に適する有限会社が認められたことは,旧商法の合資会社も立案者の案出にかかり,有限会社もドイツの学者の机上の考案であることとともに,興味がある。
 その他,合併に関する規定,設立の無効・取消に関する規定,外国会社に関する規定などは,旧商法にないものである。

3 合名会社については,その内部の関係について組合に関する民法の規定を準用するが(54条,現68条),全体の構造としては,旧商法におけるのと本質的な変りはない。なお,合名会社・合資会社でも,会社契約ではなく定款という語が用いられるようになった。

4 株式会社の設立については,政府の免許を要しなくなり,いわゆる準則主義となった。また,旧商法では,4人以上の発起人が発起し,7人以上の株主を得て設立するという方式で,募集設立の方法しかなかったが,商法では,発起人も7人以上,株主も7人以上(株主が7人未満に減じたことは解散事由であった(221条)。昭和13年の改正でこれは解散事由でなくなった(現404条参照))であるから,発起人が株式の総数を引き受ければ,株主の募集を要しない発起設立の方法が認められ,募集設立の方法と並存することになった3)。目論見書は要求されなくなり,仮定款の称呼もなくなった。発起人は定款を作成すべく,定款の記載事項が法定された(120条,現166条)。定款に公証人の認証を要すること(現167条)になったのは,昭和13年の改正からである。募集設立の場合,株式の申込は株式申込証による(126条,現175条)。旧商法では,総株式の申込があれば創業総会を開いて定款を確定し,その後に株金を払い込ませたが,商法では株金の払込があってから創立総会を開く順序となる。株金の第1回の払込が株金の4分の1以上であること(128条2項)は,旧商法と同じである。株金の全額払込が要求される(現177条)ようになったのは,昭和23年の改正からである。
 株式の金額は,50円を下りえず,一時に株金の全額を払込むべき場合に限り20円まで下すことができる(145条)。旧商法とやや異なる。その後,株金の全額払込制度をとった昭和23年の改正で,1律に20円を下りえないこととなり,昭和25年の改正で,額面株式の金額は500円を下りえないこととなった4)(昭和56年改正前202条2項)。各株主は1株につき1箇の議決権を有するが,11株以上を有する株主の議決権は制限できること(162条)は,旧商法のままであり,昭和25年の改正でこの制限ができなくなった(現241条1項)。株金の払込についても,旧商法に類する規定があったが(152条以下),昭和23年株金全額払込制度が採用され,規定の必要がなくなった。
 株券は,設立登記または増資登記の後でなければ発行できない(147条・217条3項,現226条参照)。仮株券,本株券の区別はなくなった。無記名株券が認められた(155条)。昭和13年の改正で,無記名株券は定款に定めがある場合に限り発行しうることとなった。5)(現227条)。
 株金の払戻を禁ずる規定は,設けられなかった。当然のことで,規定は無用と考えられたようである6)。設立の登記または増資の登記までは,株式の譲渡または譲渡の予約はできない(149条・217条3項,現190条参照)。記名株式の移転は,取得者の氏名・住所を株主名簿に記載し,かつその氏名を株券に記載するのでなければ,会社その他の第三者に対抗できない(150条)。旧商法と異なり,第三者に対する対抗要件にもなっているが,昭和13年の改正で再び第三者は削られた(現206条参照)。株式の譲渡は,定款に別段の定めがないときは,会社の承諾なしにできると規定された(150条)。昭和25年の改正で,定款でも譲渡を制限できないことになったが,昭和41年の改正で,定款をもって取締会の承認を要する旨を定めることができることになった(現204条1項)。株主名簿の閉鎖は,規定がない。昭和25年の改正に至って定められた(現224条ノ3)。自己株式の取得の禁止の規定(151条)は,旧商法より簡単であり,昭和13年の改正から詳細に規定されるようになった(現210条)。
 株主総会の招集に関する規定は,大筋において旧商法と同じである。異なる点は,年2回以上利益配当をする会社では,毎期に総会を招集すべきこと(157条2項,現234条2項7)),招集を請求できる株主が,資本の10分の1以上に当る株主であること8),および取締役がその請求に応じなければ,裁判所の許可を得てその株主が招集できること(160条,現237条参照)などである。総会は,定時総会と臨時総会である。定時総会における計算書類の提出などは,会社の計算の節にまとめられた。決議は,定款に別段の定めがなければ,出席株主の議決権の過半数による(161条1項)。旧商法のような定足数はない9)。しかし定款変更や解散などについては,総株主の半数以上で資本の半額以上に当る株主が出席し,その議決権の過半数による10)(209条1項‘222条)。これは旧商法と同じである。定足数に達しないときに,仮決議の方法が認められる(209条2項・3項)のも,旧商法と同じである。
 取締役は,株主総会で株主中から選任する(164条)。3人以上で,任期3年11)を超ええない。定款で定めた取締役たるために必要な員数の株式は,監査役に供託することを要する(168条)。株主中から選任するという点は,昭和13年の改正の際削られたが,定款で定めれば従来と同様であった。昭和25年の改正で,定款によっても取締役が株主たることを要すべき旨を定めることができなくなった(現254条2項)。取締役は,総会決議をもって共同代表を定めない限り,各自会社を代表し12),会社の営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をなす権限を有し,その代理権に加えた制限は,善意の第三者に対抗できない(170条2項)。
 取締役の会社に対する関係は,一般的には委任に関する規定に従うことになり13)(164条2項,現254条3項),取締役の競業避止義務(175条,現264条)や自己取引(176条,現265条)に関する規定が設けられた。旧商法のような,在任中生じた会社の義務についての取締役の連帯無限責任を定める規定は,設けられなかった。そして,取締役が任務を怠ったときは,会社に対し連帯して損害賠償責任を負い,取締役が法令・定款に反する行為をしたときは,総会の決議によった場合でも,第三者に対し連帯して損害賠償責任を負う旨規定された(177条,現266条以下参照)。
 監査役は,総会で選任され,人数に定めはなく,任期は2年をこえない(180条,現273条参照)。その職分・責任は,旧商法と大差ない。
 取締役・監査役が受けるべき報酬は,定款にその額を定めなかったときは,総会の決議で定める(179条・189条,現269条・280条,なお昭和56年改正279条)。取締役・監査役は,いつでも総会の決議をもって解任することができるが14),正当な理由なしに解任された者は,会社に対し損害賠償を請求することができる(167条・189条,現257条1項・280条)。会社と取締役の間の訴訟については,監査役が会社を代表するが,総会は他の者に代表させることができる(185条1項,現275条ノ4)。資本の10分の1以上に当る株主は,取締役に対する訴の提起を監査役に請求することができ15)(178条),この場合はとくに代表者を指定することができる(185条2項)。
 「会社の計算」の節が新たに設けられ16),ここで総会における計算書類などの承認,準備金,利益配当,建設利息,検査などが規定される。旧商法との関連でいえば,資本の4分の1に達するまでは利益を配当するごとにその利益の20分の1以上を準備金として積立てることを要し,さらに株式の額面超過発行の場合の超過額も同じ準備金に組入れられる17)(194条)。損失を?補し,準備金を控除した後でなければ利益配当をなしえず,これに違反して配当をしたときは,会社債権者はこれを返還させることができる(195条,現290条参照)。利益または利息の配当は,優先株は別として,払込んだ株金額の割合に応じてなす(197条,現293条参照)。裁判所は,資本の10分の1以上に当る株主の請求により,検査役を選任して会社の業務・財産の状況を調査させることができ,検査の結果によっては監査役に総会を招集させることができ,この総会では検査役を選任することができる(198条,現294条参照)。なお,取締役が備え置くべきものは,本店・支店に定款,総会議事録,本店に株主名簿社債原簿であって,株主および会社債権者は営業時間内いつでもこれらの書類の閲覧を求めることができる(171条,現263条参照)。これについて閲覧の停止の規定はない。
 「社債」に関する節が新たに設けられた。旧商法では,債券に関する規定は1ヵ条(206条)だけで,この規定により発行する債券に関する法律(明治23年法60号)があった。商法の規定は,これらの規定を基礎としたものである。
 定款変更は,総会の決議によってのみなしうる(208条,現342条)。増資の場合は,まず総会で定款を変更し,新株の募集・払込の後,さらに報告総会を開かなければならない18)(213条)。減資の場合については,債権者保護の手続は旧商法に類似するが(220条2項,現376条2項参照),払戻を受けた株主の責任は定められていない。株式併合の手続に関する規定が設けられたのは,明治44年の改正においてである(220条ノ2以下,現377条以下)。
 解散事由は,存立時期の満了その他定款に定めた事由の発生,会社の目的たる事業の成功または成功不能(昭和13年の改正の際削除),会社の合併,会社の破産,裁判所の命令(昭和13年の改正の際,解散を命ずる裁判と修正),総会の決議,株主が7人未満に減じたこと(昭和13年に削除)である(221条,現404条)。会社は,解散の後も清算の目的の範囲内においてはなお存続するものとみなす旨の規定が設けられた(225条1項・84条,現430条1項・116条)。解散したときは,合併・破産の場合を除き,原則として取締役が清算人となる(226条,現417条)。清算人の職務は,現務の結了,債権の取立および債務の弁済,残余財産の分配である(234条・91条,現430条1項・124条)。清算手続については詳しい規定がある。
5 商法施行法に経過規定があり,商法施行前に設立した合名会社でその社名中に合名会社なる文字を用いないものは,施行の日より3ヵ月内に社名を改めて登記すべきこと(11条),商法施行前に設立した合資会社には旧商法が適用されるが(38条),その取引に関する一切の書類に,商法施行前に成立した会社であることを示すことを要し(39条),商法に定める合資会社,株式会社または株式合資会社に組織変更できること(40条)など多数の事項が定められた。


1)民法は,商法の会社を商事会社といっている(民法35条)。なお,目的が商行為以外の営利事業であって会社とみなされるものを民事会社ということがあるが,旧民法・旧商法の下で,組合に当るものを民事会社,会社に当るものを商事会社といったのとは異なる。
2)梅謙次郎『改正商法講義』83ページ以下。なお,ドイツでは合名会社・合資会社は法人と認められず,合名会社に当るとされるイギリスのパートナーシップも法人ではなく,会社を全部法人とすることは,必ずしも一般的当然の取扱とはいえない。
3)わが国では,実際上募集設立の方法によることが多い。ドイツでは発起設立が一般で,1965年の株式法改正で募集設立の手続は廃止された。
4)しかし旧法によって成立している株式会社の発行する額面株式の金額については,旧法の規定(20円を下りえない)を適用することになっているので(昭和26年商法改正法施行法10条1項),現在でも50円株が多い。昭和56年改正では,設立に際して発行する額面株式1株の金額は5万円を下ることができないが(166条2項),株金額についての一般的規定はなくなった。
5)わが国では無記名株券はほとんど利用されない。
6)商法修正案参考書169ページ。
7)昭和49年の改正により,営業年度を1年とする会社が取締役会の決議により中間配当をなしうることとなった(現293条ノ5)。
8)昭和25年の改正により,6月前より引続き発行済株式の総数の100分の3以上の株式を有する株主となった。
9)昭和25年の改正により,定款に別段の定めがなければ,発行済株式の総数の過半数に当る株式を有する株主が出席し,その議決権の過半数による(現239条1項)。
10)昭和25年の改正により,発行済株式の過半数に当る株式を有する株主が出席し,その議決権の3分の2以上に当る多数による(現343条・405条)ことになり,仮決議の方法は認められない。
11)現在は2年,最初の取締役は1年(現256条)。
12)昭和25年の改正で,取締役会制度が採用され,取締役は取締役会を構成するにすぎず,取締役会において選任される代表取締役が代表権を有する(現261条3項)こととなった。
13)もっともこの定めは,明治44年の改正の際に挿入されたものである。
14)現在は,解任決議は特別決議によることを要し,また少数株主による解任の訴が認められている(現257条2項・3項,280条)。
15)現在は,株主の代表訴訟が認められている(現267条)。
16)商法修正案参考書169ページによれば,これは「アルゲンチン」商法にならったという。
17)現在では,利益準備金と資本準備金に分けられる(現288条以下)。
18)昭和25年の改正により,授権資本制度が採用され,授権株式数の枠内では取締役会の決議で新株を発行できることとなった(現280条ノ2以下)。

むすび

 以上,主として条例,草案,法律の条文から,会社の内部組織を規律する法制の形成を跡づけた。もちろんそれらの規定は,起草者・立案者の手に成るものであって,それが社会においてどのように受けとめられ,利用されたかは,必ずしも明らかでない。しかし明治初年以降比較的短い期間のうちに,わが国の法律家たちが,異常な努力をもって,西欧の法制を吸収し,消化し,わがものとして発展させていった意気込みは,このような考察だけからでも強く感じとることができる。
 明治9年の国立銀行条例は,株式会社制度を定めるものとしてみれば,すでに,基本的にほぼ完成した株式会社組織を形成している。ロ氏草案から旧商法に至る過程は,これとはいちおう別個の流れである。そして現行商法はまた,実質的には新しい法典であるといわれる。また,それらがそれぞれに外国の法制や法理論から学んだことは,事実である。しかしその経過のうちに,会社制度は,わが国自身のものとして定着していった。もちろん現在に至るまでの発展の間には,新しい法規が付け加えられ,会社制度が一段と充実された。けれども,すでに明治の初めにみられたものが,いったん消えて,後に再び姿を現わしたり,新しく採り入れられたものが消えてしまったりする現象も,その背景にある必要や思潮の変化とともに,興味がある。