雑貨産業

この研究テーマの論文一覧を見る

明治初期より始まった日本の産業化では、鉄鋼業、綿織物業、製糸業などの素材産業が主導的な地位を占めた。だが、当時から戦後の高度成長期に至るまで、工場数や従業員数で勝っていたのは種々雑多な消費財や部品などの中間財を製造する雑貨産業である。雑貨産業は労働集約型で工場の規模が小さく、家内工業も多かった。

 しかし注目すべきは、これらの小規模製造業が、海外からもたらされた技術を取り入れ、改良し、日本という環境に適応させるための努力を続けたことである。この技術革新への努力が、戦後日本の製造業の高い技術力をもたらした一つの要因といってよい。

 本研究会では、都市に立地した自転車産業や農村に基盤を置くボタン産業など、数種類の雑貨産業をとりあげ、その複雑な産業構造や労使関係の分析を通して、これらの産業において技術の導入と適応がどのようになされていったかを跡づけた。