地域研究

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 本研究会では、新潟県三条市・燕市と北海道という2つの地域を対象として、技術移転と地域発展の関係について考察を試みた。この点で、個々の産業を対象としてとりあげた他の研究会とは性格が異なっている。また、農村地域における農民教育という主題も扱っている。

 三条市と燕市は、江戸時代においては、和釘の産地として著名であったが、明治初期に洋釘が輸入されると、和釘需要は減退し、和釘業者は転業を余儀なくされた。様々な製品を試みた後、燕市では、第1次大戦期より金属洋食器産業が発展した。また、三条市では、大工道具などを中心とした金物産業へと転換していった。

 北海道は、明治維新後に本格的な開発が始められた地域であり、また寒冷地のため、日本の他の地域とは異なった性格を持つ。しかし、フロンティアと認識されていた北海道に、鉄道網が形成されることによって次第に他地域との差異が減少していったことが注目される。また、寒冷地での栽培が可能な稲品種が生み出され、それが戦後の多収量型品種の開発につながったとされる。

 第2次大戦後の農地改革によって農民はすべて自作農となったが、農民のために書かれたわかりやすい農業技術書は皆無に等しかった。浪江虔の報告書は、この事実に衝撃を受け、農民との関わり合いのなかから、種々の技術書をあみだしていった貴重な経験の報告である。