公害

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 公害は、工業化にともなう「負の衝撃」である。公害は、人間の健康と生命に危険を及ぼし、さらに地域環境などの公共の損害をもたらす。日本においては、公害は、近代化・工業化過程の初期から存在し、大きな社会問題となっていた。近代化の推進要因とされた先進技術の導入が公害を激化させた典型は、足尾鉱毒事件であり、被害者による公害反対運動もここに始まる。

 本研究会は、日本で問題化した事例のうち責任が明確化できる公害事件を選定して分析を行い、さらに被害が具体的にだれにどのように現れるかという被害の構造の解析を試みた。

 研究会参加者に共通の視座として以下の点があげられる。(1)公害は一方的な人権の侵害であり、強者が弱者に加える損害である。(2)人びとは公害の存在を被害者の認識によって知るのであり、被害を十分に認識しない限り、対策も必ず不十分なものになる。被害者との協力、被害者から学ぶ姿勢が不可欠である。(3)公害の解決は、画一的な法律や技術的対策だけでは不可能であり、そこには必ず関係者として被害者住民の参加が必要になる。(4)工場内の労働災害・職業病と、工場外の公害とは、同一の問題の二つの側面としてとらえられる。(5)環境の保存においては、被害者の運動が不可欠であると同時に、政治面での住民参加の制度的保証と、人権を伸長するための民主主義の確立が必要な条件となる。(6)公害を起こさせない予防措置を企業がとることが重要である。しばしば公害の予防に要する費用は、損害補償にかかる費用にくらべておどろくほど小さくてすむ。このため開発計画において事前に十分な予測を行い、当事者住民の参加によって地域開発を実行することが重要である。