実業教育

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 近代化の道を歩み始めた日本にとって、教育は重要な施策であった。1872年には初等普通教育制度が確立し、1870年代から高等教育レベルの学校が設立されていった。しかし、当時4年制であった小学校卒業生の大多数は高等教育課程には進まない。彼らに、職業教育を受ける機会を与え、より高い職業能力を得させるために、まず初等レベルの実業教育の制度化が構想された。それが、徒弟学校と実業補習学校である。いずれも1890年代半ばから実施された。

 徒弟学校は、伝統産業の近代化をになう新しい労働力を養成することを目的として設立された。(本研究会では、木工、漆器、染織、陶器、竹工を専門とする徒弟学校の事例研究をおこなった。)しかし、産業構造が次第に重工業化していくのにともない、学科の比重が機械、電気、応用化学などに移り、1920年には中等工業学校へと転換した。

 実業補習学校は、全日制の徒弟学校とは違い、勤労青少年を対象としたパートタイムの学校であり、小学校教育の補習と職業教育をおこなった。特徴的なのは、農業系の補習学校が多数を占めたことで、これは農村における青年団の組織化と結びついて発展した。徒弟学校と同じく、1920年には中等実業教育機関となったが、1935年には青年学校に統合され戦時体制に組み込まれていった。

 また、本研究会は、20世紀初頭から大企業が独自に職工養成機関を設立していったことに注目し、その形成と変容を分析した。