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技術と社会:日本の経験

論文タイトル: 第4部「日本の経験」--産業技術の事例研究 XVII その他
著者名: 林 武
出版社: 国際連合大学
出版年: 1986年
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第4部:XVII その他

 これまでに紹介してきたことが我々の作業のすべてではない.「食品(加工)技術」[大塚力,笠間愛史],「衣料/既成服技術」[中込省三]および「農村活動」[浪江〓]があったし,二つの「地域研究」も企てられていた.それらは,いずれも,予備的・準備的な作業であって,やがて本格的拡充と展開が期待されていた.
 しかし,時間と予算の制約がそれを果たさせなかった.言わば,こうした未完結の分野にこそ「開発」とかかわる重要問題があることに我々は気づいていた.すでに「予備的出版物」の型で公表されているこの分野の業績が示すように,学術的にも・政策的にも,興味深い問題を内蔵している主題なのに、協力者たちの労作を珠玉の断片にとどめてしまったことが残念でならない.
 とは言え,我々は,「対話者」たちの関心と要求に合わせようと,まことに貪欲にすぎていたのでもあった.そのことがスタッフの負担を限界的にまで大きくしていたのであったし,問題がなくはなかったにもせよ,我々はベストを尽したし,他ではこうはできなかったであろうという自負をさえもっている.私は勤務先がこのプロジェクトのために,大きな負担を敢えて辞すことなく一種の使命感をもって支援してくれたことを,特に記しておきたいと思う.
 このことは,国際機関というものの論理と生理にかかわるのだが,それは我我を鼓舞した理念と現実との落差でもあった.私は,しかし,失望しているのではない.ただ,協力者たちに申し訳なく思うばかりである.